んーそうですか。
やはりうらたんざわに行きましたか。
遠山に来なかったのは、正解?かも。
でも5月の遠山はキレイですぜ。
夏に行くべし!というイワナの支流も
アプローチの仕方を心得ましたよ。
5月3日のことを話そう。 3日は朝から天気も良く、風もなかった。連休の後半初日だから、下りは混むだろうが登りはそうでもなかろうとフンで、近場に釣りに行くことにした。うらたんざわ渓流釣り場というところだ。道志川の支流の神之川に作ってある管理釣り場である。管理釣り場と言っても水質はいいし、自然渓流をそのまま釣り場にしてあるので気分がいい。そして、ヤマメがたくさん放流されている。 行きは混んだが、それども一時間半で着いた。客はいつもの日曜と同じくらいだ。 身支度をして、竿と捕虫ネットを持って歩く。橋を二つ越え、川を徒渉して、お気に入りの釣り場に行く。 一人の先客が居た。僕と同年配の釣り人だった。釣り姿を見て、ぼくはギョッとした。彼は、体型や顔つき、雰囲気が5年前に死んだ僕の釣友に似ていた。釣友が死んだのは5年前の5月である。まさか、本人が化けて出てきたとは思わないが、ほんとうによく似ていた。ことに小柄で、ジャガイモのような渋い顔が似ていた。 彼の居るところが一番良く釣れる場所で、僕は仕方なく、彼から20メートルほど下流で釣ることにした。僕のフライに何度か山女魚が来るが、くわえてくれない。彼の方は数匹を釣っていた。僕はヤマメが何を食っているか知りたかったが、自分に釣れないのだから調べようがない。ある時、彼に釣れたとき、思い切って話しかけた。 「ストマックをやりたいので、そのヤマメをくれませんか?」 この場所はキャッチ・アンド・リリースの場所なので、どうせ彼はヤマメを川に戻さねばならない。 「え、ああストマックですね。いいですよ」 と言い、ヤマメを僕にくれた。 「どうもありがとうございます」 と礼を言って、僕の場所までもどってストマック・ポンプを使った。 すると、彼が寄ってきて、 「水生昆虫も勉強しなけりゃいけないんですが、なかなか手が出なくて」と言う。そして 「もしかしたら西沢さんじゃないですか?」と聞く。 「え、西沢さん?西山 徹さんなら知っていましたが。亡くなりましたしねえ。」 「いや、あの、お医者さんで、よく雑誌に原稿を書いておられて、そうそう脳外科の先生の・・・」 僕はどう答えるか躊躇したが、 「え、それは・・・、私です。あのー、川野と言います」 「ああ、失礼しました。やっぱりそうでしたか。お顔が、そうじゃないかなあ、と思っていたんですよ」 ストマックの中身を皿に広げる。ケースト・カディスが入ってますね。コカゲロウのニンフも。これはユスリカのピューパのようですね」 と説明すると、彼は熱心にのぞき込んでいた。 「このポイントは好きで良く来るんですよ」と僕がいうと 「私は千葉ですが、私もここが好きでしてね。仕事が忙しいものだから年に二度くらいしか釣りに来れないんですよ。」 「へえ、千葉ですか。それはそれは。私は相模原ですからすぐ来れるんです。ここの2月はいいですよ。ユスリカが大量にハッチしてヤマメが空中に躍り上がってユスリカを捕食しますから。壮観だし。ただし、30番くらいのミッジを持っていないと楽しめませんが」 「それはいいことを教わりました。おまけに川野さんに会えていい記念になりました。千葉までもどりますので、そろそろ私はきりあげます」 といい、川を下っていった。その歩き方が、また、釣友に似ていた。足はちゃんとあるし、まぼろしじゃあない。そして、ああ名前を聞くのを忘れたと思った。 こんなことがあったのです。僕の釣友が千葉の○○さんの身体を借りて現れたように感じたものだった。 山ではときどき不思議な体験をするものだ。 では、また。 タイトラインズ! |