4月19日(日)。今回いっしょにボートに乗ったS浦君はかなりのオーディオ・マニアらしく、彼から、そのオーディオを聞きに来るよう誘われていて、この日、芦ノ湖には風もあり、寒そうだったので、彼が住む富士宮に行くことにした。 彼について富士サファリパーク前を通って富士宮へ。富士宮に入ってすぐの頃、「利庵」という蕎麦屋に連れて行かれた。ここの蕎麦は薫り高くとてもおいしかった。聞けば脱サラして蕎麦屋になった人だという。隠れた名店だと思う。 次に行ったのは、以前から聞いていたフライフィッシングのアンティーク・タックルショップに行った。簡易郵便局の横に「Any Old Time」というしゃれた看板があり、行ってみると、古い竿、リール、釣り道具、フックなどの小物、古いフライボックス、マテリアル(現在は輸入禁止のモノも)、それに古着、楽器が加わって、小さな店の中にはぎっしりと所狭しとモノが置かれ、細い通路は人一人通るのがやっとだった。僕はあまりのモノの多さに圧倒されていた。あるタナでフライフックを売っていた。見ると、アイがない!なんとブラインド・フックを売っていたのだった。15本ほど入っていて700円だった。「驚いたなあ。ブラインド・フックの実物なんて初めて見るよ。日本中探しても、いや世界を見ても、これを売っている店は他にはないんじゃないかな。どうやって手に入れたんですか?」すると店主のG藤さんは、「イギリスのタックルショップが店じまいして、在庫処分したのを買ったんです」とのこと。なるほど、そうであれば理解出来る。あとはホースヘアの話になり、ツイスティング・エンジンの話になり、かなりコアな会話になってしまった。 僕はほんとうに驚いていた。これだけアンティークタックルに詳しい人に会ったことはなかった。彼も僕のことをそう思ったかもしれない。コアな人がこの店に来ると何時間も居て、ビンテージ品を見て、店主と話をして、楽しんで帰るんだろうと思う。 店主は中年の男性で、50代のような感じであった。今は、オールドタックルや楽器の修復が主たる仕事なんですと言っていた。店は趣味でやっている博物館みたいなものだった。僕は同好の士に会ったような気になり、携帯の電話番号を教え合ったものだ。 そして、S浦君の家に行ってオーディオを聞いた。レコードのすさまじいコレクションがあった。オーディオはさすがマニアであり、アンプには真空管が使ってあった!すばらしい音だった。すべての音が正確に厚みをもって再現され、歪みも、音割れもなかった。彼はCDよりもレコードの方が音が濃密な感じがして好きなんですと言っていた。今回彼のオーディオでレコードを聞いて、彼の言っていたことが少し分かったような気がした。 富士宮を発つとき、S浦君に「フライフィッシング用語大辞典」をプレゼントし、Any Old Timeの彼に「フライフィッシング用語辞典」とハルフォードの「水に浮くフライとその作成法」をあげてくれるよう頼んでおいた。 この日はコアな人を二人見たという感じだった。いや、利庵の親爺を入れると三人になる。スゴイなあと思った。 地方には、採算を度外視した、スゴイ人が居るのであった! Any Old Timeにて S浦君自慢のオーディオ