昨日の夜、自宅の風呂場に入ったら壁の角をチョコチョコ這っている動物が居た。全体が黄色っぽく、細長く、長さは6センチメートルほどで、近寄って見るとヤモリだった。ちょっとびっくりしたが、ヤモリなら悪さはしないので安心だ。 さて、どうしたものか。放っておいてもいいのだが、ウロチョロされると気になるし、踏みつぶしたりしたら、面倒だ。そこで、手桶に湯をすこし入れてヤモリに投げかけた。ヤモリは壁から湯に落下して、泳いでいるところを手桶で湯ごとにすくい、風呂場の窓を開けて外の庭に捨てた。これで一件落着! 湯船につかり、予期せぬ出来事に、頭の中を整理する。 自宅を建てて7年ほどたつが、自宅で初めて見るヤモリだった。ヤモリが住みついてもおかしくない年月がたったということか。アオダイショウなんかも居てもおかしくはないかもしれない。梨木香歩に言わせれば、そのヤモリも別世界からの使徒なのかもしれないが・・・。 ヤモリを最後に見たのはすごく前のことで、僕の学生時代、沖縄の石垣島で、1968年のことだったと思う。当時滞在していた石垣島の国民宿舎にはヤモリがたくさん居た。夜寝ていると天井から落下したヤモリが顔にポトリと落ちて、ピタピタと歩いたヤモリの指の冷たい感触を覚えている。 そう言えば、その国民宿舎はお婆ちゃんがやっていて、”よし子”さんというとても可愛い孫娘が同居していた。その子は〈私、八重山信用金庫に勤めているんです〉と自慢そうに話していたな。彼女は白目がすこし青っぽくてネ。南国の娘の目は青っぽいのかなと思った記憶がある。ほのかな恋心が芽生えたが、その子も今は孫がいる年になっているだろう。どこで、どうしているのだろうか? ヤモリが古い記憶を呼び覚ましてくれたのだった。 |