ある腕時計の実物を見たくて、相模大野にある伊勢丹というデパートに行った。近頃は実物を店で見て、ネットで買うことが多い。
　デパートに行くなんてものすごく久しぶりだ。売り子さんはたくさんいて、応対は丁寧で、お客さんは少なかった。あれで、デパートは経営が成り立っているんだろうかと心配になる。
　お目当ての時計は、残念ながら、売り場には置いてなかった。すると、応対に出た売り子さんが僕が着ていたかりゆしウェアを見て、
「あら、ミンサー織りですね！」
と驚き顔で言った。
「おう、よく知っていたねえ。なかなか売っていないんだよ」
と言うと
「そうですよねえ」
と言う。会話はそれで終わりだった。もう少しおしゃべり－たとえば彼女が八重山出身かどうかとか－しても良かったのだが、その気にはならなかった。
　せっかく伊勢丹に来たので、ついでだし、地下に行って酒のつまみ用のブルーチーズを買い、好物の「ぬれ甘なっと」を買った。帰りがけにグリーンホールの前を通ると、来年の2月に伊勢正三とイルカが相模原でライブをやるという広告が目にとまった。ウム、彼も狩野川の解禁の前にお仕事を済ますのかなと思った。
　町に出ると、短時間でいろんなことがあるもんだ。