僕の古い釣り友達が伊豆の田中山に住んでいて、禁漁になったころに釣友を集めて大きな焚き火をやる。山の上であり、富士山は正面に、眼下には三島と駿河湾がみえる絶景の地である。この焚き火会はそろそろ10年くらいつづいていて毎年恒例になりつつある。日頃は顔をあわせない人も、この時には遠くからも集まって、泊まりがけで酒を飲んで釣り談義をする。K木氏宅には独立した離れがあって、薪ストーブがあり、客はここに泊まって遅くまで話をし、疲れれば寝るということになる。客は静岡、神奈川はもとより群馬、栃木、また遠く京都からも来る。各自、地元のおみやげや酒を持ち寄るわけだが、僕の場合はシュナップスを1本と相模原のクライフのハム・ソーセージ・ベーコンを持って行った。 一人、また一人と客が来ると、ようよう、久しぶりと握手を交わし、まあ一杯と酒を注ぐ。今回は群馬から新しいお客があって、乗ってきた車がなんとロールスロイスであったことは他の客の話題となったものだ。だが、何と言っても話題の中心はK木が帰ってきたばかりのモンゴルのことだった。彼はこれでモンゴル訪問は7回目だそうだ。モンゴルはマイナス10度の世界であり、チョロート川は半分凍結していたそうだ。 この会には僕は毎回話題提供のために釣り道具を持って行くが、今回の目玉はハーディのパーフェクトというリールだった。1905年製、左巻き、赤い瑪瑙のリングガイド(ひび割れなし!)、象牙のハンドル、bridge over tension screw、3インチのフットであり、保存状態はニア・ミント。このリールをパーフェクトマニアのM石、A井両君に見せたら、驚喜して喜んでいた。こんなスゴイもの、初めて見ました、はるばる来たかいがありました。これはすでに文化遺産です、釣りに使うなんてとんでもない、値段のつけようがない逸品ですと言う。ぼくもかなりいいリールだとは思っていたが、ここまで感心されると大事にしなきゃいけないと思った。一度釣りに使ったが、今後はラインも外して、ケースに入れてしまっておく事にしよう。 |