遠山川で妙なイワナが釣れたことは前回の日記で紹介したわけだが、反響があってね、遠横のY川君も釣ったことがあると言って写真を送ってくれた。渓流魚について詳しいことを知りたいときは僕は鶴岡に住むY語さんという友人に聞くことにしている。彼は北里大学の水産学部を卒業して、サケの産卵について卒論を書き、現在山形県鶴岡の水産試験場に勤務している男だ。彼は魚医の資格も持っている。 そのY語さんに魚の写真を送ってみたところ、返事が来たので、お見せしよう。 「川野先生、本当にご無沙汰してました。私は元気でやっていますが、今年の夏は本当に暑いですね!アブも大量発生し、夕方の釣りは断念してました。魚達の反応もイマイチですし… 奇形のイワナですが、私も釣ったことがありますよ!病気というより初期発育段階の(先天性という言葉が適正かどうかは疑問ですが)要因の奇形(短躯)と思われます。大量に種苗生産している現場でも魚種を問わずに、たまに観察されます。レントゲンでは脊椎骨の癒合が確認出来ます。原因が卵発生の段階なのか 仔稚魚期の何らかの障害なのかは 定かではないのですが… ただし、薬剤や重金属、寄生虫の寄生や物理的なものの奇形とは異なりますから、個体の先天的要因と考えられます。自然界の中で、このような障害を持った個体が成長して大型になるのは至難なことで、たいていは小さなうちに淘汰されて、目につく機会は非常に少ないと思われます。河川への稚魚や成魚の放流があれば、ある程度成長した奇形魚が紛れ混んでいた確率の方が高いですから、放流頻度に比例するかも知れません。もし天然魚であれば非常に珍しい(生き残れた事が)個体であることは確かです。 まだまだ残暑が厳しいですから、お身体に気を付けてお過ごし下さい。こちらでは秋になり、潅漑用水路の水量が落ちた釣りも楽しい釣りが出来ますから、一度はいらしてみては如何でしょうか?多分9月の中旬辺りだと思います」 遠山川ではヤマトイワナを保護するためにこれまでイワナは放流されていないそうだ。ということは今回釣れた奇形イワナは自然界で生き残った貴重な例ということになりそうである。 僕が遠山川水系で釣ったもの。 Y川君が天竜川水系で釣ったもの。 |