3月18日(水)の定休日、天気も良く、狩野川の例の釣り場に向かった。暖かく、春霞がかかり、富士山はボーッとかすんでいた。
携帯が鳴り、M村さんからの電話だった。
「実はですね、もとかぐや姫の伊勢正三さんが川野さんが通っている場所が好きで、6年前から通っているんですよ。そして今も狩野川に来ておられて、今日は川野さんとガチ会うようなんですよ。で、伊勢さんにそのことを話したら、伊勢さんは僕に会いたいし、お待ちしていますから、ぜひ来てくださいとのことなんです」
伊勢正三さんのことはミュージシャンでフライが好で入れ込んでいることは知っていたが、会ったことはなかった。
お昼の12時ごろに狩野川に着いて車を川岸に止め、釣り姿になって釣り場に行くと、雑誌で見覚えのある無精ヒゲの男がにこやかに迎えてくれた。お互いに自己紹介し、彼が、
「あの、かぐや姫って分かりますか?」と聞く。
「ウーン、もしかしたら神田川を歌った人たち?」
「そうです、そうです」
とのことだった。僕はボブ・ディランやジョーン・バエズは聞いていたが、日本のフォークシンガーのことはあまりよく知らない。だが、神田川は知っている。石鹸箱がカタカタ鳴る、いい歌である。
彼はこの釣り場に惚れ込んで通っていること、この日は朝から来ていて、ライズがあって釣ったが鉤掛かりしなかったことを話してくれた。で、二人並んでライズ待ちをした。
そして1時ごろに一度ライズしたが、二度目にライズしたら釣ろうと思っていたら、二度とライズは起きなかった。4時まで待って、僕は一度も竿を振らず、そこでの釣りを終わったのだった。この日は暖かかったが、流下水生昆虫は今季で一番少なかった。ほんとうに水生昆虫のハッチの予想は難しいし、気まぐれだと思う。
ということは4時間伊勢さんとおしゃべりしていたことになる。僕のこともたくさん話したが、彼も九州(大分県)出身だとのことで盛り上がり、彼は63歳になるが、今も歌っていて、童謡を作っているという。また僕と同じ博多出身の武田鉄矢もフライを始めたそうだ。伊勢さんが巻いたユニークなフライも見せてもらった。
夕方にはA田君やM村さんも来て、やることはないので、写真を撮ったりした。そして、車を止めたところまで戻ると、川でライズがあったので釣り始め、期待しながら暗くなるまで釣ったが、釣れなかった。
ああ、5連続ボウズである!
ま、今日の収穫は伊勢さんと知り合いになったことかな。
解散の時、僕は伊勢さんに「フライフィッシング用語辞典」を進呈した。すると
「CDを何枚か送りますよ。どれがいいですか?」
「いやあ、そんなことを言われてもよく知らないし。適当に見つくろって、余っている分でいいよ」
と答えた。
その晩、クリニックに戻って伊勢正三について調べてみた。そして彼の作詞作曲の「なごり雪」をYou Tubeで聞いた。聞いたことがある歌だったし、ウム、いい歌だった!