ツマグロアマゴを釣って証拠写真を取りたいという思いは、僕の心の底にゆらゆらと揺れながらも確実に存在し続けている。人によってはそれを残尿感と呼んだりするようだ。その魚を釣るにはいくつかの条件がすべて揃わなければいけないのだが、それは容易なことではないようだ。
晴れていると釣るのはほぼ無理で、食いの立つまずめ時にワンチャンスあるかないかだろう。いっぽう、雨だと”脅え”の要素が抑えられ、釣れやすくなるだろう。そこを狙って、一週間前、冷たい雨の中で三島のDちゃんが2本を釣り、いずれも放流物だったそうだ。その二日後に僕がツマグロを掛けたわけだ。
というわけで、僕は雨で無風の日を待ち望んでいた。そして3月19日(土)の朝6時~10時の間がその条件に一致することを知った。早起きが苦手な僕は一大決心をして朝3時半に起きた。6時に現場に着いて準備していると、驚いたことにN居田君が現れたのだった。
「いちおう来てみたんですが、ライズは少ないですねえ。僕は他を当たってみます。頑張ってください」
と言う。
この日、小雨が降り続け、ほぼ無風だったが、虫はほとんど流れておらず、ライズは少なく遠く、釣れなかった。そして10時ごろから雨脚は強くなり、土砂降りとなり、ついに釣りをあきらめた。
やることもないので「百笑いの湯」で時間をつぶし、昼過ぎに釣り場に戻ってみると真っ茶色の濁り水がとうとうと流れていた。天気は急速に回復し、青空が出ていた。ここでの釣りをあきらめ、大見川、本流上流部を見て回ったが、濁りと増水で、とても釣りの出来る状態ではなかった。天城山あたりで集中豪雨があったようだ。
僕は帰ることにして東名に乗ったのは3時ごろだった。運転中猛烈な睡魔に襲われ、足柄SAで仮眠をとった。そのあと、思いついて世附川を見に行った。数年前の出水で完全に破壊されたと聞いていたが、目で見たわけじゃない。行ってみると、流されてきた石・岩がのっぺりとひろがって、一番低いところに浅瀬がまっすぐ流れていて、淵や瀬が連なるかつての世附川はなくなっていた。玄倉ものぞいたが、工事が続いていて、水は白く濁っていた。
ものはついでと、以前から気になっていた「谷峨駅」を見に行ってみた。世附によく釣りに行っていた頃、国道に「谷峨駅入口」の標識を見て、その「谷峨」という名前が気になっていた。古くからのいわれのありそうな地名であり、駅舎も古い無人駅かと思ったが、行ってみるとモダンで、ちょっと期待はずれだった。
濁流の狩野川(月ヶ瀬旧慶応リハビリ前)
世附川入り口
谷峨駅