9月15日は中秋の名月だった。この日、我がクリニックがある磯部では伝統の行事が行われた。それは「お月見」というもの。 この日の夕方、子ども達は連れ添って各家をまわり、玄関のチャイムを鳴らして、ドアが開くと、 「お月見くださいな」 と言う。これがなかなかに可愛い。住民の方も心得ていて、用意していた駄菓子の包みをわたすというわけだ。子ども達は、ありがとうと言った後、肩から下げた大きな袋にもらったお菓子を入れ、次の家に向かう。中には大量のお菓子でふくれあがった袋を持っている子もいる。 来るのはたいていは小学生低学年で、ときには幼稚園(保育園)の子も来るが、そのときは母親が付き添っていることが多い。また、中学生あたりになるともらいに来るのが恥ずかしいようで、見たことがない。 去年はどうしたわけか、お月見の日をコロッと忘れていて、当日になって子ども達が来てびっくりしたがもう遅い。手ぶらで帰ってもらうことになってしまった。で、今年は前日から準備して、100袋を準備し、クリニックの入り口には「お月見あります!」という貼り紙を出すことにした。 けっこうたくさん来たなあ。80個ほどさばけて、残りは職員におすそ分け。 この「お月見」の習慣は相模原の古い川沿いの集落(上溝、下溝、田名、磯部)ではかなり前からあったらしい。相模原は戦後に大きくなった町だが、江戸から丹沢大山への「大山詣で」の道筋(大山道)、ことに相模川の渡し場には集落があり、田名という集落には遊郭まであったそうだ。 磯部は僕の仕事場であって、住んでいるわけじゃないが、できるだけ地元の行事を支援していこうと思っている。 こういう、田舎の、ちょっとした楽しみは残っていってほしいものだ。 |