このところ体調がいい。暖かいという予報が出た5日の定休日の昼前、弁当を持って丹沢に向かった。東丹沢に漁協が定期的にヤマメを放流している沢があり、行ってみることにした。 車止めの近くの橋の上から見ると、川はかなりの減水であり、しかもいちばんいいポイントには大木が倒れ込んで、釣れなくなっていた。で、釣りはあきらめ、弁当とお茶を持って車止めから林道をすこし歩いて、堰堤下に行って、弁当を開いた。食べながらも、目はチラチラと水面のライズをさがしていた。 と、堰堤の上に釣り人が現れた!餌師であった。そして堰堤の上から堰堤下の深みを釣り始めた。これは僕が釣りの服装をしていたら、絶対にしてはいけない行動である!〈もしかしたら彼は僕の存在に気がついていないのかもしれない〉とも思ったが、そんなはずはないだろう、僕は長靴もはいていないし、竿も持っていないから、弁当を食べている”非釣り人”と思ったんじゃないだろうか。黙って彼の行動を見ていたが、魚は釣れないようで、僕は弁当を食べ終わり、河原を歩いて下流側に行ってみた。 川が曲がっている所で、やや深く、水面は波立っていないので底まで見える淵があった。ライズはなかった。魚が見えないかなと思い、もう一歩水際に近づいたとき、川底を黒い影が2匹走り、1匹は上流側に、1匹は対岸の崖下の凹みに逃げ込んだ。 魚が居たのだった!それは20センチメートルくらいで、全体が黒っぽかったから魚種は分からない。魚が何か確かめる必要があると思った僕は水際から5メートルほど離れて倒木に腰をかけ、パイプを取り出して持久戦に入った。 15分ほどたったころだろうか、水面に小さな変化が起こり、水面直下に魚が見えた。20センチメートルほどの魚であり、体側には明らかにパーマークがあった!ヤマメだった。見ていると、そのヤマメはゆっくりと移動しながら水面の餌をついばんでいた。 僕は嬉しくなった。状況から考えて、そのヤマメを釣ることはほぼ不可能だったが、ヤマメが居たというだけで僕はむしょうに嬉しかった。 |