それでは早速第1報として「トラウト」のはじめの部分をお見せしよう。翻訳文は何度も読み直して手を入れて良くなっていくので、今回お見せするのは粗稿であり、そこをご承知いただきたい。 トラウト レイ・バーグマン 「ジャスト・フィッシング」の著者 カラー図版の作画 ドクター・エドガー・バーク フライ・タイイングの写真 チャールズ・エス・クルーグ 線画のイラスト アービン・シックルズ ペン・パブリシング・カンパニー フィラデルフィア 本書の版権は1938年、ペン・パブリシング・カンパニーが有する トラウト アメリカで印刷 献辞 多くの友人たちに、ともに釣った釣友に、またこれ まで私との接点がなかった方々に、 この本を捧げます。 この本に書かれていることは、私があなた方と一緒 に釣りに行った時の話です。この本を読んで楽しめ、 役に立つことがあり、記憶に残ることがあれば、そ れは著者の大きな喜びであります。 私が死んだ後も、現在この本を読んでいる人たちが あの世に逝った後も、この「トラウト」という本が 生き続け、将来の世代の人々に釣りへの愛と理解を 与えることができますように・・・。 はじめに このような本の紹介文は、私以外の誰か、淡水の釣りの分野で著名な方に書いてもらうべきなのかもしれません。けれども、私は人生を生き抜くために誰の助けも借りずに自分一人で奮闘してやってきましたので、この「トラウト」という本についても、売り上げを増やしてくれそうな外からの助力なしに、本自体の魅力によって自力で世に出て行ってほしいと願っています。この本には人まねではなく、この分野で私が努力して獲得したことがらが書いてあります。個性が強く出ているでしょうし、よく言えばオリジナリティーが高いと言ってもいいでしょう。というわけで、紹介文を誰かに書いてもらうことはやめにしたのです。 けれどもこの手の本では序章・紹介文があることが習慣になっているし、期待する読者もおられるようなので、私自身で書くことにしたというわけです。 本を書くことには何時間ものハードワークや犠牲や自己規制が必要でした。私は私が経験したことにもとづいて、ストレートに、そして正確に書くようにつとめました。重要な事実を抜き出して、読者が理解しやすいようにしました。問題が発生したときには、ごまかさずに正面から問題に取り組み、1ページを書くのに数時間かかったことも何度かありました。アメリカのすみずみで35年間釣ってきた経験にもとづいて、理論的のみならず気持ちの面からも納得できる書き方をしたつもりです。それは、親しい友人が私に会いに来て、その彼に直接話しかけるような雰囲気で書きました。たとえば私のある体験について友人に話すとき、その友人にとっても実体験になってほしいので、リアリティーを伴った文章になるように気を配りました。 本のタイトルをどうするかという作業はやさしくはなく、何日も悩んだものです。そして、ある日の夕方、近くに住んでいる友人のハーバート・ペティットが家に寄ってくれ、本の執筆の進み具合を聞いたのです。私は、単純な大問題をかかえて四苦八苦していることを話すと、彼は 「どうして”トラウト”にしないの?」 と言うじゃありませんか!確かに、単純明快なのがいちばんなわけで、ペティットの助言を採用させてもらったのでした。 「トラウト」であれば間違いなく目的にかなっているし、誰にでも気に入られるでしょう。トラウトを通じて友人も増えるでしょうから・・・。 レイ・バーグマン もくじ Ⅰ.初期のころの経験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 Ⅱ.ウェットフライ・フィッシング・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 Ⅲ.ウェットフライのタックルについて・・・・・・・・・・・・・・・・42 Ⅳ.ニンフとその釣りについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 Ⅴ.ウェットフライとニンフの経験・・・・・・・・・・・・・・・・・・69 Ⅵ.バックテールとストリーマー・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 Ⅶ.ドライフライの基礎とタックル・・・・・・・・・・・・・・・・・142 Ⅷ.ドライフライの経験-その色とサイズについて・・・・・・・・・・201 Ⅸ.日光と影・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・240 Ⅹ.水のタイプと釣り方について・・・・・・・・・・・・・・・・・・272 Ⅺ.鱒の視力・合わせ・ライズ・フォームについて・・・・・・・・・・295 Ⅻ.止水での釣り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・306 ⅩⅢ.アンプクア地方のスティールヘッド・・・・・・・・・・・・・・324 ⅩⅣ.レイクトラウト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・343 ⅩⅤ.美しいグレーリング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・363 ⅩⅥ.グリルスとランドロックト・サーモン・・・・・・・・・・・・・371 ⅩⅦ.フライタイイングについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・387 カラー図版のフライのタイイング・レシピーの詳細・・・・・・・・・407 つづく |