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2012年07月23日(月) 

 ことしも北アルプス白馬にイワナ釣りに行った。お泊まりは定宿となったペンション「フロンティア」。
 20日(金)。ボクとY本さんは金曜から泊まりだ。なぜなら土曜の釣りは朝7時フロンティア出発と早いからね。宿に着くと「白馬の山猿」こと山田さんとも1年ぶりに再会。夕方にはY本さんと二人でのんびりと「みみずくの湯」に行った。お客さんもすくなく、くつろげた。外では小雨がパラついていた。
 21日(土)。朝7時に三島からT橋、S浦、S山、A田、F君、磐田からS井の6名が到着。さっそく沢割りをして出発。白馬岳は雲に覆われて見えなかったが、白馬村では雨はほとんど降っていなかった。釣り場は白馬岳の中腹のかなり標高の高い所であった。この日の天気予報は午前中は曇り、午後は晴れになっていた。
 釣り始めたのは9時ごろだったろうか、雲は垂れ込めていたが雨は降っておらず、水位はやや高めで、水は透明で濁りはなし。川沿いに道はなく、釣り終わったら入渓点まで川通しで降りてくるので、雨に濡れては困る財布と車のキーはビニール袋に入れてデイパックにしまい、デイパックは藪に隠した。この状態ならいい釣りになりそうに思った。T橋さんと写真を撮りあったりしたあと、彼は支流に入っていった。ボクには17センチメートルくらいのイワナがすぐに釣れたが、写真に撮るには小さすぎるのですぐにリリースし、釣り上がりを開始した。10時頃ごろだったろうか、大粒の雨が降り出した。それでも釣り続けたが、雨粒が水面に落ちたしぶきでフライが見えなくなってきた。こりゃあいかん、一休みだと思い、岸の木陰に入って待つことにした。ボクは簡易雨具しか持ってきていなかったので全身が下着までびしょ濡れになっていた。木陰で10分、20分と待ったが、雨はやまない。気温も急激に下がってきていて、寒さを感じていた。ヴェストから温度計をとり出して測ると気温は15℃を切っていた。川の上には水蒸気のもやが出て、水が白っぽく濁り出していた。それを見てボクは決心した、引き上げようと。15分ほどで入渓点に戻ったが、川を見ると、水位の上昇はそれほどではないが、もう真っ茶色に濁っていた。そして、車までもどってきて、乾いたタオルで体を拭いていたら、急に腹が減っていることを感じ、サンドイッチとおにぎりを食べた。それでやっと人心地がついたのだった。
 ボクは他の友人たちが心配になっていた。さいわい、この釣り場は標高は高いが携帯が通じる。電話してみると、みな大変なことになっていた。S浦・S山組は早めに脱渓して難を逃れていたが、T橋さんは大増水で川に近づけず、藪こぎして降りてきている途中だった。A田・S井・フトシ組が大変だった。A田君に電話すると
「どうだい、大丈夫かい?」
と聞くと、
「先生は大丈夫ですか?」
「うん、早めに切り上げて、今はもう車まで戻っているよ」
「そうですか、それは良かった。僕たちは増水で川がわたれないんです。今日は戻れないかも知れない」
と言う。
「なに、なんだと!戻れないかもしれないだと?よし、山田さんに連絡してみるからね。携帯を濡らすなよ」
「はい、わかりました」
 彼らが入渓した沢は通称「親爺殺しの親爺」と呼ばれる急傾斜の渓流で、もちろん道なんか川沿いにはない。川通しで移動するしかないので山田さんが救助に行っても、大増水の中、連中と会えるかどうかもわからない。山田さんに電話すると、
「今、A田さんから電話がありました。これからザイルを持って救出に行ってきます」
とのこと。ボクがチラッと思ったのは、山田さんが連中を救出できればいいが、ダメだったら連中は(水がひくまで)山の中で1泊するか、それとも山岳救助隊のヘリの出動を依頼するか、ということだった。あの標高で夜になると気温は10℃を切るかもしれない。しかも全身ずぶ濡れで・・・。生死の危険の匂いを感じたものだ。
 2時頃だったか、皆がペンションに戻ってああだこうだと話しているとき、山田さんから、全員救助しましたとの連絡が入った。ドッと安心の声がわき上がったものだった。
 その後は白馬村は雨も降らず、やることもないので、ボクはY本さんと二人で近くにある「楡池(にれいけ)」という釣り堀に行った。そこには綺麗なニジマスがいて、ドライフライでイヤというほどたくさん釣り、「おびなたの湯」に入って宿に戻った。湯質が良く、芯から温まった感じだった。
 その日の夕食はまず”無事生還を祝っての乾杯”から始まったのは言うまでもなかろう。話題はもっぱら降雨、増水の話だった。ただ一人、尺イワナを釣ったヤツが居たのには驚いたものだ。
 話を総合すると、釣り場の北側や南側を流れている川の増水はたいしたことはなかったことから、きわめて狭い範囲で集中豪雨があったとおもわれること。また、増水は分単位で急速に進行したこと。なぜなら、ボクが脱渓したときには濁りは急速に進行していたが水位はあまり上がっていなかった。同じ川の、標高にして約300メートルほど下にA田君たちが居たわけで、ボクが脱渓したあと、5分か、10分後には写真のような濁流の状態になり、川がわたれなくなっていたのだ。ボクものんびりしていたらA田君たちと同じことになっていたと思うとゾッとする。ほんとうに間一髪で災難を逃れたのだった。
 ボクは高校時代には山岳部に入っていて、夏山、冬山、岩登りをやった。山の怖さは一般の人よりよく分かっていると思う。山釣りも長くやってきたし。そんな経験がもしかしたら今回ボクを災難から救ってくれたのかもしれない。びしょ濡れで寒かったのも”良かった”ような気がするが・・・。
 それにしても山は怖い。特に川は怖い。鉄砲水が出るときには、はじめに木の枝やゴミが流れてくるとか、ゴーッと音がするとか本に書いてあるが、実際は前触れもなしに急激に増水することが多いのではないだろうか、今回のように。思い返すと、透明だった水が急に濁り出したことが始まりだったようだ。里川だったらこんなことは問題にならないが、山岳渓流では鉄砲水となって命取りになってしまうことがあるのだ。今回の増水は鉄砲水とは呼べないかもしれないが、かなり鉄砲水に近い状態だっただろう。
 皆さん、気をつけましょう。命より釣りが大事と釣り人は思っているが、やっぱり、命がないと釣りもできないからね。
 翌日の22日(日)。朝食の後は解散で、各自好きな川に散っていった。ボクは例年通り、綺麗なスケルトンイワナを釣りにXX川に向かった。霧雨が降っていて、川は増水だったが、水は綺麗で釣りはなんとかできる状態だった。熊スプレーとハンティングナイフを身につけて釣り開始。すぐに17センチメートルくらいのイワナが釣れたが、写真を撮ろうかどうしようかと迷っているうちに逃げられてしまった。その後はまったく釣れなかった。だが、川は美しく、たくさん写真を撮った。
 いやあ、今回は「白馬の山猿」にほんとうにお世話になりました。もと山形マタギのこの男は頼りになると感じ入った次第だ。笑い話になってほんとうに良かったが、一歩まちがうと、笑い話ではなくなっていたんだから、ホントに。
 無理をしたり、準備不足で遭難するのは非難されてしかるべきだが、山では予測不可能のことがおこるものであり、今回の限局的集中豪雨は予測不可能であったと思う。おそらく、この川の源流付近でものすごい降り方をしたんじゃないだろうか。 
このエピソードは語り継がれていくだろう。いや、語り継がれていかなければいけない。A田君の息子にも、そのまた息子にも。自然の恐ろしさの体験談として。

後日談:後で山田さんから聞いた話。救出にはザイルと竹の棒を持っていったという。竹の棒は水深を測るためだった。彼はA田君たちが居る場所を想定して、その場所に降りられるよう、藪を漕ぎ、急な斜面を無理矢理降りて行ったそうだ。並の体力でできる技ではない。そして一番水深の浅い場所で、ザイルを川の向こうに投げ、体を結わえてもらい、ザイルを引っ張って川をわたらせたが、上がってきたA田君たちは寒さでガタガタ震えていたそうだ。それほどの状況だったのである。



この時はまだ平水だった。このあと、下の写真のような濁流に変わっていたはずだ。


A田君が撮影したもの。濁流であり、自力で渡るのは不可能だろう。

帰る直前、フロンティアの前で記念写真。


スケルトンイワナの棲む美しい川


閲覧数1,873 カテゴリ日記 コメント4 投稿日時2012/07/23 19:21
公開範囲外部公開
コメント(4)
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  • 2012/07/23 23:30
    先生お疲れさまでした。
    山は、甘く見ると怖いですね。
    先生からは、早い時間に脱渓する旨連絡があったので、安心でしたが、オヤジのオヤジ組に連絡がつかず心配でした。
    僕は、これで2度目なので、前回の経験からこのようなときは、谷へ下るのではなく“尾根を目指せ”を思い出し2時間の藪こぎはきつかったのですが、なんとかなりました。
    ただ、反省点として、このような山岳渓流では、一人での行動は極力控えなければと感じました。
    このようなことがあったので、先生から提案のあった、地図の話少し考えてみます。
    次項有
  • 2012/07/24 09:27
    携帯が通じる場所でよかったです。
    40cmのイワナを釣るより貴重な経験だったと思います。
    これからは経験者として山をなめるなと
    胸を張って言えます(笑

    ホントにみんな無事でよかった。
    次項有
  • 2012/07/24 10:31
    鉛筆狂四郎さん
    タッチンさん

    「増水の時は尾根をめざせ」ですか、おぼえておきましょう。
    釣り人用川の地図はやっぱりあったほうがいいでしょう。
    全体のようす、自分が居る場所の確認、脱出ルートの決定などに、かならず役に立ちます。
    次項有
  • 2012/07/24 10:36
    鉛筆狂四郎さん
    釣りたいクン3号さん

    ひとつ、経験が増えたね。このことに関しては1号、2号にも教えてあげなくちゃあ。
    今度、親爺の親爺に入るときには、もともと深そうだし、はじめから脱出用のロープを張っておいたらどうか?帰りに撤収していけばいいんだから。
    次項有
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