西湖のへら鮒の強い引きが忘れられず、ふたたび西湖に行った。今回は袋井のK松さんと一緒だ。この日は低気圧の影響が残っていて、強い西風が1日中ふくらしい。そこで、船頭さんと相談して風裏になる石切というポイントに入ることにした。
　朝一はアタリがなかったのだが、8時頃から晴れてきて釣れだした。K松さんはボート釣りが初めてだそうで、何かと慣れないようだった。そしてしばらくして
「下向いて仕掛けを作っていたら酔っちゃいました。海じゃないのに酔うなんて思ってもいなかったんですが」
と言う。波もそれほどではないので、ボクもちょっと驚いたが、疲れていたり、睡眠不足や空腹だと酔いやすいものだ。彼もいくつかの悪条件が重なったんだろう。気の毒だがどうしようもない。彼は陸にあがったり、昼寝をして、やり過ごしていたようで、しばらくして楽になってきたようだった。
　ボクには午前中に6枚が釣れた。サイズは２８－３３センチメートルほど。そのうちの1枚は浮きを消し込み、猛烈な突進を繰り返し、尾に鉤が掛かったんだろうと思って寄せてみたら、ちゃんと口に掛かっていて驚いたものだ。ふつう、へら鮒は口に鉤が掛かったら、初めは突進するが、いったん浮き始めると、その後はおとなしいものだ。ところが西湖のヘラは突進を繰り返す。まるでニジマスみたいだった。
　午後になると、風はあるが快晴になり、不思議なように、アタリはピタリと止まった。3時までがんばったが、ふんぎりをつけ、早めに納竿とした。K松さんには最後にヒゲのある妙な魚が釣れた。彼はボウズを免れましたと喜んでいた。彼は魚の写真を撮って、写メでO川さんに送ったところ、ギギという魚だそうだ。そういえば、ボクが先週西湖で釣ってナマズと思っていたのと同じ魚だった。彼にも西湖の強いヘラを釣ってほしかったんだが、船酔いではしようがない。
　帰りに前浜をのぞいてみたら、西風にもかかわらず、前浜の湾は波がおだやかだった。ようし、このつぎは少々の西風でも前浜に入るぞと思った。