主人の実家から持ってきた、
小学館の植物図鑑(ねんき入ってます)より、
”しゃく”せり科 だと思います。
ぼんやり見える葉っぱは、せり科のものです。
6月16日(土)。 旅行も終わりに近づいてきた。安比高原は標高は800メートルくらいだそうだが、白樺が多く、関東で言えば1000メートル以上の気候のようで、空気は乾燥してすがすがしい。 明日は帰る日なので長時間の移動を考えると釣りらしい釣りはできないだろうから、今日が釣りの最後の日になると思われた。そこで、多家さん、小川さんと相談して、すこし遠出をしてみようということになった。行く先は葛巻の馬淵川とその支流に決まった。お昼は途中の町にある、多家さんお勧めの”きのこラーメン”。これが普通のラーメンとはずいぶん違っていて、とてもおいしかった。 まず馬淵川支流で釣った。小口・清水・川野の3人が歩きやすい下流部に入り、多家・小川・酒井・粟田の4人は上流部へ移動した。橋の上から見ていると、小口さんは足が悪いので、川への降り口を探してウロウロしていた。僕は清水さんのテンカラ釣りを見たかったので彼を探した。 清水さんは短めの道糸で、たんねんに打ち返しながら釣っていく。僕は河原に腰をおろして見ていた。やがて、清水さんは上流の方に釣り上がっていった。僕は腰を上げ、50メートルほど下って釣り上がることにした。川は平水で、水色も良く、小石底で、いかにも魚が居そうな流れである。カゲロウが数匹飛んでいた。ところがまったくドライフライに反応がない。おかしいなあ、と思いながらも元のところに戻った僕はタバコを吸いながら川を見ていた。目の前には清水さんがすでに釣った、いかにも魚が付いていそう場所がある。その流れで、カゲロウがスッと水面から飛び立つのが見えた。ふっと、あることを思いついた。もしかしたら魚は羽化のために水中を移動しているニンフを今食っているんじゃなかろうか。だからドライフライに反応しないんじゃないか、と。そこで、僕は6エックスのティペットを50センチほどリーダーに付けて、ビードヘッド・ヘアーズイヤーニンフを結び、ティペットとリーダーの結び目にインジケーターを付けた。二回目にうまく流れに乗って2メートルほど流れたとき、インジケーターは何かに引っかかった感じで水中に引き込まれた。すかさず竿先をあげると確かな魚の手応えが伝わった。まずまずのカタの魚だった。魚とやりとりしていると、反対側の土手の上に清水さんが通りかかり、びっくりした顔で見ているのがわかった。自分が釣れなかった所を約10分後に別の人が釣ったのだから。取り込んでみると、23センチメートルほどのイワナだった。 清水さんはしきりに僕をほめてくれた。僕は思いつきを説明して、彼にヘアーズイヤーニンフを一つ進呈した。テンカラの毛鉤はウェットフライのようなものであまり深いところは釣ることはできないでしょう、フライフィッシングのニンフには鉛が巻き込んであるのでかなり深いところまで釣ることができるんですよ、と説明する。だが、清水さんは相当大きなショックを受けたようだった、自信を失いました、とも言っていた。僕は申し訳ないことをしたと悔やんだが、あんなに早く清水さんが戻ってくるとは思ってもみなかったし、しかたがない、と思うことにした。 テンカラは手返しが良く、釣り人からかなり離れたポイントでも毛鉤のナチュラル・ドリフトができるという有利さを持っている。だが、特定の魚を狙って釣るということに関してはフライフィッシングの方が有利だろう。 次に釣ったのは一つ下流側の支流だった。この川も魚影が濃く、フライによく反応したが、鉤がかりした後魚は全部バレてしまった。おかしいなあ、と思いながら集合の時にみんなに聞くと、この川の魚の多くはヤマメだという!そうか、それなら、と納得した。これまでイワナばかり釣ってきたから合わせはゆっくりでも良かったのだが、俊敏なヤマメならもっとすばやくピシリと合わせなければちゃんと鉤がかりしない。イワナのつもりで合わせたから、鉤がかりが十分ではなく、バレたのだと。 さて、今日の残りの時間をどう使うかという相談になった。その結果、小川・酒井・粟田君は徹底的にイブニングまで釣りたいという希望であり、現地に残ることになった。後で聞けばすばらしい釣りだったようで、酒井君は尺イワナを釣り上げたという。また、連中は馬淵川本流の上流部でクマの足跡を見たそうだ。クマと遭遇するかもしれないという恐怖の体験は、その後繰り返して話題になったものだ。 小口・清水・川野・多家組は"釣りより温泉"というわけで、八幡平の松川温泉へと向かった。葛巻からは数時間のドライブあであり、車窓からは雄大な岩手山がよく見えていた。標高の高い所には雪が残っていた。 温泉は、とても、よかった!!乳白色のお湯であり、露天風呂では湯ノ花が厚々と底や石に堆積していた。あるところに深さ30センチメートルくらいで表面が平たい石があった。その上にあぐらをかいて座ると、臍ぐらいまでがお湯に浸かった。僕はしばし、陶然となってまわりの木々の緑を楽しんだ。見ると、足や股間には湯ノ花がからみつき、ああ本当の温泉に入っているんだなあ、来てよかった、と思った。お湯を手ですくって口に入れてみた。酸っぱい味はしなかった。この露天風呂は混浴だと多家さんが教えてくれていた。ただ、若い女性は見たことないですがね、とも言っていた。僕は30分以上露天風呂にいたと思うが、残念ながら女性は見ていない。 松川温泉を出た後、車は夕暮れに包まれた八幡平高原を下って行った。目の前にはひろびろとした景色が広がり、ふりかえると八幡平の背後には美しい夕焼け雲が見えた。 「明日も天気のようだねえ・・・」 と小口老がつぶやいた。 つづく。 追伸:またもや、この花の名を・・・ |