「選択」3月号が届いた。切り捨て御免の内容がてんこ盛りだ。たとえば、「崩壊するユーロ神話」、「老害見本市となり果てた自民党」、「もはや燃えカス経営者-稲森和夫(JALのCEO)」、「無策日銀総裁に退任の勧め」、「名医は日本の外にいる-メディカル・ツーリズムの最前線」、「地に墜ちた特捜の権威」、「これでも日本は法治国家か-精神鑑定の世界」など。 だが、今回僕が一番印象深かったのは中村 計氏の「不運の名選手たち」と題する連載で、今回の対象人物はノルディックスキー・ジャンプ選手の藤沢 隆。彼は天才かつ努力型の名選手であった。ジャンプで1本目はすばらしいジャンプをするが、2本目には失敗することが多かった。彼が言った言葉に迫力があった。 「今でも鮮明に覚えている。やめるって決めた途端、大きな勘違いをしていたことに気づいた。オレは人間はときに110も120も力を出せるもんだと思っていた。でも、100以上なんてない。120出たって言う人もいるけど、それは錯覚ですよ。今までが50,60だっただけでしょう」 「完璧をわざわざ壊して、やったことのない飛び方をしていた。100を目指せば失敗しても95か96ぐらい。でも、120をねらったら極端なマイナスしかない。頭悪いんじゃないかって思うほど、同じミスを繰り返していた」 これは限界まで、いや限界を乗り越えながら挑戦してきた人だけが知る世界だと思う。ノンフィクションもここまで追究して書いてくれたら、読み応えがあるし、何らかの示唆を後生に与えるだろう。この中村 計氏の連載はまとめて単行本になれば、かならずや大きな反響を産み、売れるだろうと確信している。 |