朝6時、宜野湾マリーナに向かうと、すでにクルーが忙しく準備をしていた。船名はクリスタルワン号で、りっぱなクルーザーであった。準備を待つ間があったので、港に居た魚を釣って遊んでいたらハリセンボンが釣れた。愛嬌のある顔をしていたので写真をお見せしよう。 この日は釣り大会になっていてチームクリスタルも登録済み。そしてスタートとなり、大会参加者のボートが一斉に沖に向かって走り始めた。いよいよである。久米島近くの慶良間列島の釣り場までは1時間ほどかかるそうだ。広々とした青い海を海風をいっぱいに受けて走るのはまことに爽快だった。海の色は深いインディゴブルーで、天気も良く、水平線上には入道雲がわき起こっていた。だが、波はかなりあって 「けっこう波がありますね。これは普通ですか?」 と聞くと、A里先生は 「やや波はありますが普通ですね。このくらいで出船をやめたら沖縄では釣りになりません」 とのこと。ここは東シナ海の外洋なのだ。酔い止めを飲んでおいて良かったと思った。僕はカジキ釣り用の釣り道具が珍しかった。すべてが巨大であり、鱒釣りとは次元の違う道具であった。太い竿には巨大なペン・リールが取り付けてあり、80ポンドテストのライン、ルアーも見せてもらったが、そのあまりの太さ、大きさに驚いたものだ。 途中、渡名喜島に寄った。海が浅くなると水の色はエメラルドグリーンになり、綺麗だった。 そして、いよいよトローリング開始。船尾から5本の釣り糸を数十メートル流す。内の2つにはティーザー(ヒコーキ)が着いていて、水しぶきをあげて魚を誘う。リールのドラッグは中くらいにセットしてあり、ルアーに魚が掛かれば、ジジーッとラチェット音が鳴るのでわかる。その時は、他の5本をすぐに巻き取って、1本の竿で魚と格闘するわけだ。 だが、この日は魚の機嫌が悪かったらしく、1回のヒットもなかった。後で聞いたんだが、この日水温は32℃もあったそうだ。水温が高すぎるとカジキは深場に行ってしまうので釣れないそうだ。釣り始めは期待しながらヒットを待ったが、だんだん待ち疲れて、ついにはキャビンに入って昼寝をした。一度、小さな鳥山があり、期待が高まったが、ノーヒット。そして、時間切れとなり、帰港となった。 マリーナに戻り、他の船の成績を聞いてみると、15隻が参加してカジキは1匹しか釣れていなかった。マリーナではちょうどそのカジキを検量しているところだった。僕は初めてカジキを見るわけで、近くで見るとやはり大きな魚だった。測ってみると75㎏ほどだった。ウム、明日こそは我々もと思ったが、自分の体重と同じくらいの魚を果たしてあげられるのかどうか、不安にもなった。 この日の夜、僕はある女性と再会することになっていた。と言っても僕とワケアリの女性ではない、念のため。彼女は高校・大学での生物部で僕の1級下の人だ。目がクリクリして可愛い人だったという記憶がある。で、彼女は琉球大学に赴任して、那覇に18年間住んでいた。人骨を調べて琉球人はどこからきたのかという研究をしていて、本も書いている。久しぶりにメシでも食おうということになったわけだ。N居田君も誘い、3人で「ぱやお」という店に行った。いろんな話が出たが、僕は彼女の結婚生活に興味を持った。彼女は結婚して子どもも居るのだが、旦那と子どもは福岡にいて、那覇では一人住まいである。その状態が18年続いているという。ふむ、男にとって不便なような、だが羨ましいような状況であった。彼女は熊本生まれの女である。熊本の女は気が強いというのが通説であり、僕も賛成であり、その辺があるんだろうなと思った。彼女も今年定年で琉球大学を退職したそうだ。 「で、今後どうするの?福岡の旦那の所に行くの?」 と聞くと 「もう2-3年は研究をしたいからこっちにいて、それから考えようと思って」 という。ふむ、なかなかに気の強い女である。何と言っても熊本女なんだから。 |