6月28-30日。奥日光に行った。最大の目的は「秘密の湖」で大きなニジマスを釣ること。これは前にも書いたかもしれないが、そこは仲間内で秘密にしている小さな湖で、標高は1500メートルの位置にある。自然の湖であり、戦後ニジマスが放流されたが、その後放置され、一般道からは湖が全く見えない谷底にあるので、釣り人も入っていなかったようだ。 ボクはそこに連れて行かれたのは2年前であり、パラダイスのように美しく、そして、まことに綺麗なニジマスが釣れるのに驚いたものだ。そのときは流入している細流でペアリングしているニジマスも見た。そこでの釣りは6月がベストのようで、今回急に思い立って行ったもの。おかげで友人たちの都合が付かず、ボクは一人で運転して、金曜日、中禅寺湖に向かった。予定は、29日は単独で湯川を釣り、30日は栃木の友人たちと「秘密の湖」に行く。 「いろは坂」を登り切ると霧に包まれた中禅寺湖が見えた。泊まりは定宿になった湖畔のペンション・フレンドリー。F谷さんご夫婦にお土産をわたす。夕食を食べながらご主人の話を聞く。「福島原発事故の影響で中禅寺湖の魚が食べられなくなってお客さんがガタッと減ったんですよ。自慢のヒメマス料理が出せなくなっちゃいましたからね。われわれ漁協組合員は大打撃ですよ。お客さんが減ったからホテルや食堂も大変です」とのこと。気の毒だが、放射能レベルが下がるのを待つしかないようだ。 29日。この日は一人で湯川を釣った。湯川の盛期を過ぎているから釣り人は少ないかと思ったら、これがけっこうな釣り人が来ていた。なかなかいいライズが無かったが、ついにいいライズを見つけた。ところが、これがセレクティブでなかなかフライに出ず、雨が降ってきた。雨脚は次第に強くなり、ライズは止まってしまった。ボクは大きな木の下に移動して雨宿りをした。30分ほど待つと雨はやみ始めたので、ふたたびライズスポットに行ってみると、ジャボッとライズした!よし、”今度こそ”とフライを変えて流すとバシャと1発で出た!一雨降ってブルックも気が変わったんだろう。寄せてみると見事なブルックトラウト、25センチメートルだった。黒っぽい、暗緑色の地肌に朱点が映えて美しい。ボクは惚れ惚れと眺め、たくさん写真を撮った。こんな綺麗な居付きのブルックを釣ったのは数十年ぶりのような気がした。これまでは成魚放流のブルックばっかりだったからナア。後で知ったが、この10年くらいは成魚放流をしていないんだそうだ。なるほど、その成果が現れているんだなと納得したものだ。 雨は降り続いて、体も濡れてきたが、気分は上々で、戦場ヶ原を横切って車まで戻った。 やっぱり、湯川はいいなあと思った。自然が残っていて、川も昔と同じだ。そして、ブルックの釣りも好きだし・・・。ブルックはフライに出ないときは全く出ず、出るときはしっかりとちゃんと出る。中途半端な出方は絶対にしない。その、「all or noneすべてか無か」というブルックの性癖が釣り人の琴線をくすぐるのである。 その夜、食後に湖岸に出てみると、一面の霧であった。街灯もネオンもぼうっとカサがかかり、車のライトもけむっていた。夜霧の中をひとつの人影が歩道を足早に歩いてきて、ボクの横を通り過ぎた。チラッと顔を見たら、女であった。