7月2日(木)、曇りのち晴れ。 〈阿寒湖のアメマスは黄金色をしているんですよ〉と釧路の水口さんが言ったのは2003-4年頃だったろうか・・・そのときボクはにわかには信じられなかったものだった。だが、送ってもらった写真を見ると、体部は黄色味を帯びているだけだったが頭部にはあきらかに黄金の色調があり、フライフィッシング用語辞典(2005)にはその”黄金のアメマス”の写真を使わせてもらったのだ。その時以来、ボクもいつかは”黄金のアメマス”を見てみたいと願ってきた。 そしてようやく今回阿寒湖への釣りが実現したのだった。季節も良く、モンカゲロウを含めて水生昆虫の羽化があるので、ドライフライで釣れる可能性があるらしい。ただ、湖の釣りでは(風向き次第で)場所の当たり外れがあるので、ガイド付きのボートに乗ってライズを見つけて釣りをすることになった。手配はすべて水口さんがやってくれ、釣りの時間は午後3時から日暮れまでだそうだ。 午前中はすることもないので、藤プリントを見学することにした。藤プリントは水口さんがやっている印刷会社で、これまでカワノ・ブックスの本を3冊も作ってもらっているが、会社自体を見たことはなかった。行ってみると建物はとても清潔できちんと整理され、働きやすい職場であることがよくわかった。社長の水口さんは不在だったが、ある社員が内部を案内して印刷・製本の工程を説明してくれた。玄関脇と階段の横壁には沖野さんのイラストが飾ってあった。 昼前には水口さんと釧路港に行った。かなり沖めでアメマスらしきモジリがあり、何投か投げてみたが釣れなかった。もうすこし季節が進めば岸近くに寄ってくるらしい。 昼食ではおもしろい蕎麦を食べた。それは、盛り蕎麦にくわえて”かしわぬき”というものが付いてくるものだった。”かしわぬき”とは暖かい”かしわ蕎麦”から麺を抜いたもので、スープ兼おかずとして食する。これはとてもユニークでおいしかった。 阿寒湖では10人くらい乗れそうな大きな舟に船頭一人と客二人が乗って湾の奥深くに入って行った。そこでは風が無く、岸近くではカゲロウのダンやスピナーが飛んでいて、岸近くでライズがあった。13番くらいのカゲロウが多かったので早田さんからもらったダークブラウンのボディのドライフライを投げると、すぐにフライは水中に吸い込まれ、魚が掛かった!なかなか元気が良かったが、止水なので取り込みは楽で、釣れたのは40センチメートルほどのアメマスだった。そして、そのアメマスの顔には確かに黄金色の色調があったのだった!ボクは十数年想い続けてきた恋人に会ったように感じて、まじまじと魚を見つめてしまった。たくさん写真を撮った。 ボクは雑魚川で釣ったイワナを思い出していた。そのイワナは濃い黄色の色調だったが、阿寒湖のアメマスは黒みがかった薄黄色であり、こっちの方が黄金の色に似ていると思った。 ライズは岸スレスレ、岸から10~20センチメートルくらいで起きていて、木の枝が湖面上に突きだしているので、なかなかライズの場所にフライが届かなかった。そして何とか2匹目が釣れ、それは50センチメートル近くあった。薄暗くなる頃には虫がたくさん飛んでライズも増え、いろんなフライを使ってみたが、釣ることはできなかった。フライフィッシングではよくあるパターンであり、敗北感を感じながらも、ボクは目的だった”黄金のアメマス”を釣ることができて、おだやかな気分で帰路につくことができた。 夜は釧路市内の炉端焼き「万年青(おもと)」に水口さんと行った。ここは地元の人がよく行く、古くからある店だそうで、ボクは去年に続いて2度目だった。ホッケを焼いてもらったが、これほどおいしい、脂ののったホッケを食べたことがなかった。 今回の旅行の最後の夜であり、けっこう飲んで、何を話したか記憶にない。どうやってホテルまで帰ったか、切れ切れにしか覚えていない。これじゃあ、アブナイ!今後は酒量を抑えなくっちゃあ。 水口さんの妹さんと。 かしわ抜き+盛りそば