7月3日(金)。晴れ。
いよいよ、旅行の最終日だ。午後3時10分の釧路発の便に乗る予定なので、それまですこし釣りをする時間がある。そこで空港にも近い阿寒川に行くことにした。阿寒川のC&R区間の下流では去年そこそこのニジマスを掛け、彼は突進して流木の塊の下に入って逃げられてしまった。今回はそのリベンジをしたかった。
ホテルの建設現場の駐車場に車を止め、左岸側を下流に向かった。このあたりは自然林が美しく、見ほれながら歩く。と、突然ケモノの吠える声を聞いた。それは一声であり、
「ワオー」
という感じの低い、かすれた声だった。川沿いに道路があるが、車関係の音ではない。エゾシカのかん高い声でもなく、キタキツネの声でもなかった。もっと大きな動物の声だった。大きなケモノと言えばヒグマしかいないじゃないか!ボクはあたりを丹念に見たが、それらしい影は見えなかった。どうしようかと一瞬考えた。すぐに引き上げるべきだったかもしれない。だが、ボクは〈ヒグマは先にボクを見つけて軽く威嚇したんじゃないか、その後、移動したんだろう。第一ヒグマの吠え声じゃなかったかもしれないし、建設現場の人たちもふつうに働いていたし〉と考えた。また、もしボクが右岸側の森の中に居たらさっさと帰ってきただろうが、川をはさんで反対側の左岸に居たのも安心感をもたらしたようだ。
しばらくようすをみたが、その後声も聞こえず、もう少し下流側に進むことにした。だが行ってみると、去年あった流木の塊はなく、ポイントは失われていた。リベンジに来たんだから、ポイントがなくなっていればどうしようもないので、上流にもどることにした。途中で、ワスレナグサが咲いていた。
C&R区間でドライフライを投げてみたがまったく反応は無く、沈めてまで釣りたいとは思わなかったので、すこし早いが納竿することにした。駐車場に向かう途中、作業車で休憩していた作業員がボクを見て、
「釣れました?」
と聞いた。
「いやあ、ぜんぜんダメだね」
と答える。
釧路空港ではレンタカーを返し、六花亭のお菓子をおみやげに買い、飛行機に乗り、羽田にもどった。東京は雨で、梅雨の真っ最中だった。自分の車で相模原にもどったが、あまりに短時間で着いてしまい、同じ日の昼過ぎまで青空の下で、緑に囲まれて阿寒川で釣りをしていたことが”信じられない”ように思われた。
今回もいろんなことがあった。旧友との再会、研究会、サッポロビール園、ひろじみゆさん、十勝の釣り、澤田耕治さん、茶路川のヤマメ、釧路の宴会、阿寒湖の黄金のアメマス・・・。
皆さん、おかげでいい旅になりました。
どうもありがとう!
また会いましょう!