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2007年06月20日(水) 
 6月14日(木)。
 この日はまる一日、宇田さんが釣り場を案内してくれ、一関から駆けつけてくれた村田 久さんと僕の3人で釣りをした。ここで、村田さんを簡単に紹介しておこう。僕より一つ上の64歳で、フライ歴は長く、岩手を中心に東北の渓流を釣り歩いておられる。端正な文章を書くネイチャーライターとして良く知られ、「底なし淵」、「岩手の釣り」、「イワナ幻談」、最近では、「イーハトーブ釣り倶楽部」など著書多数。FM岩手で”外遊び・・・”という番組を長くやっているそうだ。僕は彼の文章が好きで、ことに村人との関わりの描写がおもしろく、前から会ってみたい人であった。そこで、村田さんが宇田さんと仲がいいのを知り、今回、宇田さんに頼んで一緒に釣ることが実現したのだった。
 今日の釣り場は早池峰山の西側の渓で、昨日の川より一回り大きい。大岩と大淵が連続し、遡行はかなり難渋するが、イワナは多く、カタもいいという。宇田さんお勧めの現在最高の釣り場だそうだ。ここでは川歩きというより岩登りに近くなるので、若手の小川・酒井・新居田・粟田の4人に釣ってもらうことになった。〈年寄りはもうちょっと楽なところで釣りましょう〉という宇田さんの案内で村田・川野・宇田の3人は小田越えという峠を越えて早池峰山の東側の渓流に移動した。
 車から降りるととたんに鳥やセミの声に包まれた。うるさいほどだった。晴れて、暑い。振り返ってみると、この日の釣りは、これまでの釣りとはすこし違っていた。魚を釣ることよりも、一緒にいることや活力に満ちた自然の中に居ることを3人とも楽しんでいたように思う。3人が3人ともカメラを持ってきていて、お互いや、花や木々の写真を撮っていた。
 あるポイントで、淵じりにイワナが居ると直感した僕は姿勢を低くして近づき、二投目にうまく流れたフライにガバと魚が食らいついた。いいカタの魚で、淵下の瀬に奔り込んだ。僕の竿は大きく曲がっていた。下流側で村田さんと宇田さんがカメラを構えているのが見えた。魚は瀬で竿を半月のように曲げたまま動かなくなった。と、次の瞬間、ググッと竿先が引き込まれ、スッと軽くなった。僕は中腰だったので、あおりを食って、〈ワワッ〉と叫びながら後ろにひっくり返った。それを見た宇田さんがニコニコしながら言ったものだ。
「先生の釣りは愉快ですねえ、いや、実に楽しそうに釣りをされる」
と。
「え、成り行きですよ。だけど、くやしいなあ、いいカタのイワナだったのに」
「はは、アイツは体を捻って鉤を外したんですよ。この先でまた釣れますよ、また」
となぐさめてくれる。

 ここではたくさん写真を撮ったのでギャラリーにしよう。











 移動中の車の中で、僕は村田さんにカワシンジュガイのことを聞いてみた。この貝は水質の良い上流域にしか棲息しない。その貝が絶滅の危機にひんしていることを最初に指摘した人が村田さんであることを僕は知っていた(底なし淵)。
「まだカワシンジュガイは残っていますか?一度見たいものですが、どこかの水族館で展示していませんか?」
と聞くと、
「水族館では飼育は不可能なんですよ。水質の関係らしいんですが。一カ所だけ、まだ、残っている川を知っています。年に一度は見に行こうと思っているんですが、今年はまだ行けてません」
「そうですか、今度岩手に来るとき、連れて行ってくれると嬉しいんですが」
「ああ、いいですよ。今となっては貴重ですからね」

 夕方、若手組と落ち合うと、みな、目の色がキラキラと輝いていた。彼らの川では信じられないようにたくさん釣れたらしい。小川さんは尺イワナを2本も釣ったそうだ。
「スゴイですよ、ここは、フライをアントに変えたら一カ所で次から次へとイワナが出てくるんだから、きりがないんですよ、きりが!」
と。
 記念撮影をして、村田さん、宇田さんと別れ、僕たちは安比へと向かった。
また来てくださいねと村田さん、宇田さんが言ってくれる。

 ありがとう、宇田さん!
 ありがとう、村田さん!
 そして、
 ありがとう、早池峰の山と渓流!

 別れた後、車の中ではみんな黙っていた。それは「幸せの沈黙」であったことはまちがいないだろう。そして、みんなまた来るぞと強く決意していた。

 つづく。

追伸:花の名前が全部分かった人はコメントしてください。ひとつ、分からないのがあるので。

閲覧数707 カテゴリ日記 コメント5 投稿日時2007/06/20 18:25
公開範囲外部公開
コメント(5)
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  • 2007/06/21 00:01
    マサさん
    イーハトーブ釣行 楽しんで読んでます。

    村田さんの本は私も好きです。
    岩手の話なので、時々読みかえして風景を思い出してます。
    早池峰の川には暇さえあれば行ってたような気がするけど、いいとこですよね(^^)

    一輪の赤い花。カタクリの仲間でしたっけ?
    名前は分からないけど、あの花、好きでよく眺めてました。

    次項有
  • 2007/06/21 09:01
    鉛筆狂四郎さん
    上から3段目の左から2つ目および3つ目はヤマオダマキですよ。
    カタクリとはちょと違うぞ。
    次項有
  • 2007/06/21 09:42
    CHIRORIさん
    安比の旅は楽しかったようですね。私も行きたかったです!もうかれこれ3年行っていないかな?どこに旅に行くよりも安比の旅は楽しい!私のやりたいことの全てがそこにあるんですから!今回行かれなかったことは本当に悔しいです(;O;)
    そして、綺麗な写真を沢山見せていただいてありがとうございます。
    お花の名前は・・・多分ですが・・・
    ヤナギランとタニウツギではないでしょうか?
    次項有
  • 2007/06/21 10:37
    鉛筆狂四郎さん
    そうかそうか、今度は一緒に行こうね。
    タニウツギはいいと思うが、ヤナギランとは違うように思う。花の大きさが違う。この花は、よこにフキがあるようにフキよりちょっと小さいんだ。ウチョウランと似ている感じがするが・・・
    次項有
  • 2007/06/21 12:57
    CHIRORIさん
    そうだそうだ、今度は一緒に連れて行ってね(^・^)
    お花は・・・う~ん。気になって、気になって、すっごい勢いでネット検索してました。でも、これだ!っていうのが無いですね~。
    実は、すっごく貴重な発見だったりして!
    もう少し調べてみます。それにしても可愛らしいお花ですよね。
    次項有
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