やっと「アメリカン・バンブーロッドのいままで」(徒渉舎、2008)という本を読み終わった。ジョージ・ブラックというアメリカ人がユースティス・エドワーズを中心にハイラムレナードとその後継者のロッド作りの歴史をくわしく書いたもの。翻訳は緑川 淳。原題は「Casting a Spell」で、訳すと「呪いにかけられて」となろうか。
翻訳本のタイトルはややオーバーで、内容はレナード一門に限られていると言っていいだろう。だが、力作である。バンブーロッド・ビルディングという繊細な手仕事に魅入られて、快適な生活や贅沢を捨て去った職人たちのことを事実を調査して書き綴っている。そのような技術の粋に魅入られて、呪いを掛けられたようにのめり込んだ人たち。少数の人からは賞賛されるが、収入は低く、完璧をめざして毎日たゆまぬ作業を続ける誇り高き人たち。これは職業ではない。芸術の領域に属する、と感じたものだ。
このような職人気質や仕事至上主義は日本人の特質だろうと自惚れていたのだが、いやいやそんなことはない、アメリカ人にもあったのだ、ということがこの本でよく分かる。これは「国は違っても人そのものは世界中、同じようなものだ」という僕のこれまでの考えと同一線上にあると言っていいだろう。
こんな本が出ると困った現象が起きることがある。アンティーク・ロッドをほしがる日本人が増え、値段が吊り上がってしまうのだ。やれやれだが、景気も悪いことだし、それほど心配することもないかもしれない。