今日の午後、40代半ばの小柄な女性がクリニックを受診した。
「片頭痛のお薬ですね」
「はい」
「どうですか、このレルパックス(薬の名前)で頭痛はおさまってますか?」
「はい、ピタリとおさまります」
「そうですか、それはよかったね。今回20錠もらっていきたいのですね?だいぶお金がかかりますが」
「それはいいのです。今まではこんなお薬があるとは知らなかったものですから。このお薬で人生変わりました。お金にはかえられません」
「ええっ、人生変わったって!」
「ほんとうにそうなんです。感謝しています」
彼女の大げさな言い方にボクは驚いたが、彼女はまじめな顔だった。ボクは嬉しい衝撃を受けていた。
一般の方は頭の半分だけ痛いのを片頭痛と思っているようだが、それは違う。医学で言う片頭痛とは、かならずズキンズキンという脈拍のような拍動性の頭痛であり、頭痛の場所は頭の半分だけのことが多いが、基本的には場所は関係がない。頭痛は時間と共にひどくなり、数時間続き、もっとも頭痛が強くなると吐き気や嘔吐をともなう。頭痛は数時間から数日続いておさまってくる。また、人によっては頭痛が始まる直前に前兆が起きることがある。それは多くの場合視野にチカチカ光るものが見え、この光も脈拍と同じように動いている。これを閃輝暗点と呼ぶ。典型的片頭痛の場合は、まず、閃輝暗点が現れ、数分続き、光が消えると入れ替わりにズキンと頭痛が始まる。
前兆の時は脳の血管がちじんでいて、次に脳の血管が拡がると頭痛が起きる。だから、脳の血管をちじめる特効薬を飲めば頭痛は消えるというわけだ。なぜこんなことが起きるのかわかっていない。重大な病気ではなく、ほうっておいてもいいんだが、頭痛はつらいので特効薬を飲んだほうがいいだろう。小学生くらいの子どもにも起こるので親から登校拒否と思われることがあるようだ。思い当たる方がおられたら、脳神経外科か神経内科を受診したほうがいいだろう。