5月27日(火)、晴れ。陽光が葉の先のしずくに当たってキラキラ光っていた。クラブハウスのテラスから川を見下ろすと平水に戻っていた。 さあ、今日こそ中野川の釣りだ。今日はボク以外に2人の釣り人が居て、ボクに優先権があるらしく、ボクはベストスポットである西山広場から入渓することになった。そこに行ってみるとメモリアル・ベンチが置かれ、西山さんの顔が描かれている金属板が取り付けられていた。ボクは西山さんとは何度か一緒に釣りをしたし、いろいろお世話にもなった。で、その金属板を手でぬぐって汚れを取っておいた。 道路から10メートルほど降りると川であり、美しい中野川川の流れがあった。ゴミなどはなく、まったくの自然の流れだった。水はすこし緑がかっていて澄んでいた。砂地の河原は遡行しやすく、開けていて、キャスティングになんの問題もなかった。 すぐに1匹の綺麗なアマゴが釣れた。ひれも完全であった(この川では稚魚放流だけを行っているのでアマゴはほぼパーフェクトな魚体)。 深みのあるプールではライズがあった。ところが、このライズが釣れなかった。下流側からキャストするとライズが止まってしまう。空中のラインを察知するのか、ラインの着水を察知するのか、どちらかのようだった。その後、上流側に回り込んでダウンストリームに流したが、くわなかった。ボクがおびえさせてしまったようだ。というふうで、やさしくはなかった。 すこし上流側の開けたスポットに付いたとき、道路に齋藤さんが現れた。岩井さんのフライを届けに来てくれたそうで、ついでにカメラを渡して写真を撮ってもらった。いい流れ込みがあって、いかにもアマゴが付いていそうだったが、何度投げてもフライに出ない。すると、齋藤さんがこれを使ってみてくださいと渡してくれたのはオドリバエ・パターンで、ボディはユスリカ・ピューパ風で水に沈み、グレーのCDCを浮かせるために取りつけたシンプルなフライだった。そういえば、さきほどからオドリバエがたくさん水面上をかすめて飛んでいた。これが効いたねえ。1発で出たのは、これも綺麗なアマゴだった。さすが、リバーキーパーのお勧めのフライは効くのだった。 お昼には川から上がり、木の香温泉温泉まで行ってカレーライスを食べ、また川にもどって、今度は上流の24番から入って新堰堤下の大淵を釣った。そこでは対岸の岩沿いにいい型のアマゴが水面直下に居て、ときどきライズしていた。そこまでは18ヤード近く離れていて、フライをなんども取り替えて狙ったが釣れなかった。この魚も後で齋藤さんに聞くと、あれは釣れないんですと言われてしまった。 ここでは成魚の追加放流はされていないので、稚魚放流の分が大きくなったものだけであり、釣っては放されが繰り返され、とても学習している。しかも水の透明度は高い。ドライフライも水面高く浮くタイプではまず釣れないようだ。ここまで思い至ったとき、スキューズ式のウェットフライの釣りに思い至ればよかったのだが、そのことに気がついたのは、この日の釣りが終わった後だった。 この日、ボクには2匹しか釣れなかったが、とても満足して釣りを終えることが出来た。まず、川が美しいこと、魚が綺麗なこと、入渓ポイントは予約制なので(もともと釣り人は1日8名までである)その日の最初の釣り人に自分がなれること、釣りの間に他の釣り人に会うことが無いことが良い点であり、釣りがやや難しいという欠点をはるかに上回っていた。そして、釣りの帰りにはクラブハウスに寄ってタダコーヒーを飲み、リバーキーパーの齋藤さんとおしゃべりして帰るということになっている。 こんな釣り場が関東にあったらいいなと思うが、ドッと釣り人が押しかけて、ダメになってしまうことは明かだろう。都会から遙か離れた四国の真ん中にあるから成り立っているような気がする。 これで、四国の旅もおわりだ。夜はまたクラブハウスで酒を頂いたが、荷物を整理して荷造りをして、明日は早めに四国を発って、夕方に行われる小学校の同窓会に間に合わなければいけない。 明日の晩は60年ぶりにボクのマドンナに会える。それが不安でネ。