S藤さん
存命とはとても思われないな。
1909年生まれだし、1982年にこの本を書いたときには病院がよいの合間に書いたそうだから。
こんな人がいたとは、この本を読むまで僕は知らなかったなあ。
語りぐさになりそうな大井川源流2009の釣りから数日がたち、昂ぶった気持ちも落ち着いてきた。そんなある晩、買いためてあった数冊の本のうちの一つを読んでみた。檜山義夫著「魚釣るこころ」(1982年)だ。 タイトルに惹かれて注文したのだが、内容は予想とはだいぶ違っていた。なぜ人は釣りにのめり込むのかという大命題に挑んだ文学的なものを期待していたのだが、実際は釣り場の保全・管理、釣り人の心得などが書いてあったのだ。少々がっかりしたわけだが、読み進めてみると、まことに優れた見解が述べてあり、日本の釣り場を何とかしなければいけないと思っている釣り人にとっては必読の書と思われた。タイトルに騙された感があるが、いい本に当たったと感じている。 さもありなん、著者は水産学の権威であり、東京湾のハゼの保護に力を尽くした人であった。印象に残った文を書いておこう。 ・・・ これは土木工事が土木学的な考慮しか払わず、自然の河や海の岸がもつ水質浄化の役目を殺してしまっているのである。 釣りは魚を釣るだけではなく、自然を楽しめるところに値打ちがある。どうして魚のいる自然を維持するか。これがこれからの問題である。 この10年ほど、日本にも川や海の自然保護の動きが出てきているが、檜山さんの活動のおかげもあったのではないかという気がする。東大教授であったというのも影響力が大きかっただろう。こういう御仁が日本の水産学あるいは水産行政にもっと居てほしいものだ。釣り人代表みたいな政治家が居るといいのだが・・・。 |