さて、博多の雑煮のことだが、僕は博多の雑煮が好きだとは言えるが、他の雑煮と較べて旨いとは決して言えない。なぜなら僕は博多以外の雑煮を食べたことがほとんどないからだ。
多くの人もそうじゃないだろうか。雑煮は正月に食べるものだから郷里の家か自宅で食べることが多い。過去に数回、正月に病院の当直をしたときに出された相模原の雑煮を食べたくらいだ。正月を旅館ですごすということもやったことがないし。だから、博多以外の雑煮をほとんど知らないと言っていいだろう。
前置きはこのくらいにして。本題に入ろう。博多の雑煮の出しは昆布+鰹節+椎茸そして焼きアゴでとる。焼きアゴとはトビウオの丸干を焼いたモノ。この出しが旨い。焼きアゴは関東では入手できないので博多から取り寄せることになる。
具の主役は塩ブリである。博多は日本海に面していて、昔から脂ののった寒ブリを重んじる国柄である。その寒ブリに塩をして数日おいたものが皮付きの切り身で雑煮にはいる。
塩ブリの相手役はカツオ菜である。出しがやや複雑濃厚であり、脂ののった寒ブリが入るのでしつこくなりがちな味を苦味の強いカツオ菜が見事に中和してくれるのである。このカツオ菜も関東にはないのでお取り寄せとなる。
この絶妙の取り合わせが博多の雑煮の旨さであり、特徴だろうと思っている。具には他にも椎茸、里芋、カマボコなどが入り、丸い餅を焼いて入れる。これで一椀が完成となる。澄まし汁、具だくさんの雑煮である。
僕は博多の雑煮を食べるときは、まずその独特の香りを十分に楽しむ。次に汁を飲みうなずいて、おもむろにブリを食う。脂の乗った寒ブリの旨味と塩の二重奏を愛で、そしてむしろ対極にあるカツオ菜の苦い爽やかさを味わえば、まことにバランスの良いところに落ち着き、満足感・幸福感を感じることができる。
この雑煮は博多商人の贅を尽くして生まれたという説もあるらしい。僕の家は決して裕福ではなかったのだが雑煮だけは子供の頃からこの雑煮を食べてきた。関東に来ても材料を博多から取り寄せて食べている。時には正月以外にも食べたくなることがあるが、手間と材料の問題から女房どのは協力してくれない。
ま、年に一度の、お正月のお楽しみということが、よけい旨く感じさせているのかもしれないが。
誰しも、自分の生まれ故郷の雑煮には格別の思い入れがあるものかもしれない。一度、静岡の雑煮を食べてみたいな。