日曜日、この日はスケルトンイワナを釣りに行く。山田さんは用事があってガイドができないので川までの地図を描いてくれた。
このスケルトンイワナという呼び名は白馬の山猿こと山田さんが勝手に付けた呼び名だ。この、石の白い川に棲むイワナは色が黄色っぽくて、透明感があって、骨が透けて見えそうな美しいイワナなので、スケルトンと名付けたそうだ。ただひとつ問題があった。そのC川には熊がよく出ると言う。山田さんも過去数回は熊と遭遇したが、特に被害はなかったろの事。熊鈴を忘れずに持って行ってください、と念を押されてしまった。
で、始めは僕一人で行く予定だったのだが、A田君が一緒に行ってくれることになった。彼は、たまたまだが、この日が37歳の誕生日であった。誕生日に熊と遭遇というのもしゃれているように思ったが、敢えて口にはしなかった。山田さんに別れを告げ、今年のお礼を言い、来年の再会を約束してペンションを出た。
僕とA田君は車でかなり山の奥に入って行った。途中で数匹の猿を見た。標高1000メートルほどの地点で車止めとなり、そこから川に入った。
美しい川だった。川底は花崗岩が多く、白色~黄色で、水の透明度は高かった。僕は川の美しさに圧倒され、写真をたくさん撮った。もちろん釣りも真剣にやったんだが、イワナはフライに一度も出なかった。リーダーを長くしてティペットを7Xに落として、ポイントから離れて釣ったが、それでもダメだった。川原の砂地には足跡が残っていて、釣り人も多いようだった。そして遂に真新しい足跡を見つけた。これは当日のものであり、その日、朝一で釣り人が通ったことを示していた。A田君にはさいわい2匹が釣れ、写真を撮ることができた。
そのイワナの綺麗なこと!黄色っぽくて透明感があるのにくわえてヒレ、ことに尾ビレの縁は鮮やかな赤で、オレンジ色の色調があった。尾ビレは透明でね、薄物の肌着のようで、色っぽかったなあ。おまけに目が大きい!パッチリまなこだった。これではどう見ても若い女性を思い浮かべてしまう。ギャルイワナと呼びたくなってしまう感じなのだ。これでオスも居るわけだから、オスはオカマイワナということになるのだろうか。
こんなイワナを見たのは初めてだった。自分で釣っていないのが悔しいなあ。
ようし、これで来年の目標ができた。来年こそは絶対釣るゾと思っている。
ただね、熊は心配だなあ。A田君は鈴を手に持ってしょっちゅう鳴らしていたし、僕も時々ホイッスルを吹いた。
熊に守られた妖艶な岩魚かあ、話のネタとしては面白いが・・・、釣りに行くとなるとやや二の足が出にくい感じではある。
白馬の山猿と相模の狂四郎
いかにも熊が出そうな笹藪を歩く。