5月2日、マタウラの釣りの2日目。この日は朝から快晴で、風もなかった。かなり冷え込んで霜が降りていたが、気持ちのいい天気であり、良いことが起こりそうな予感がした。釣り姿に身を固めて出発し、途中、10年前に大釣りした懐かしの「29番ゲート」にも行ってみた。ここ数年、そのゲート裏のノビーズ・プールはあまり釣れていないそうだ。 川の水の濁りはかなりおさまってきていた。午前中はライズはないのでニンフ・フィッシングをやり、Y田さんは数匹を釣ったらしい。ボクはライズがないのにドライフライで釣ったが、まったく反応はなかった。 お昼ごろにはゴアの町の、有名なブラウントラウトの像の前で記念写真となった。そこの看板にはにはGore: World Capital of Brown Trout Fishing(ブラウントラウト・フィッシングの世界の首都:ゴア)と書いてあった。 午後のハッチに釣りには浅く長いプールに行った。そこはイブニング・ライズ・ポイントとか呼ばれているようだった。土手に腰掛けてライズを待つ。1時過ぎごろだったか、鳥が飛び始め、水面にはカゲロウが流れ始めた。時間とともに流下カゲロウの数が増え、ダンだけではなくディリアティディアム・ヴァーナーリのスピナーも流れていた。そして、ライズが始まった。それは岸よりの流れの緩いところで始まり、ライズの場所はその都度違っていた。どうやら1匹の鱒が移動してライズしているようだった。ボクはカメラをデイビッドに渡して、釣りの体勢に入った。その鱒は3箇所でつぎつぎとライズしていたので、そのうちの1箇所にフライを浮かべた。フライはストリームサイド・スペシャル17番。待つことしばし、鱒はボクのフライのすぐ横でライズした。ボクの右手は動きかけたが、かろうじて、おさえた。そして次の瞬間、その鱒はボクのフライを飲み込んだ!そしてボクの右手が上がった。フィッシュ・オン!!!その様子をデイビッドが見ていて 「ウェル・ダン!(巧い!)彼はそのフライが」好きなようだねえ」 と言ってくれた。寄ってきた鱒は綺麗なブラウントラウトで、デイビッドが計測してくれ、52センチメートルあった。嬉しかったなあ、今回はじめてちゃんとした魚を釣ったのだ、しかもドライフライで。そして、ボクはストリームサイド・スペシャルに対して信頼を深め、よし、今後はすべてこれで行こうと決めたのだった。また、デイビッドが、 「そのリールはいい音がするねえ。まるで古いハーディーリールみたいだね」 「これはね、ハンドメイドのいいリールなんだよ」 「なんていうの?」 「ゴドフリーっていう、アメリカのリールなんだよ」 と、ちょっと道具自慢をしてしまった。 こんなふうで、やさしくはない釣りだったが、ライズを探しては、それを釣っていった。2匹目に掛けた魚は重く、途中でバてしまった。デイビッドは、アレは大きかったよと言っていた。結局、3-4匹を釣り、ボクは満足していた。Y田さんもすこし上流部の流れの速いところで数匹を釣っていた。その内の1匹はやや色が薄く、斑点が少なかった。デイビッドはシーランだと言う。シーラン・ブラウントラウトは同じ型でも引きが強いそうだ。Y田さんはすっかり釣りに入れ込んで、その後も夢中になって釣っていた。 やっとマタウラらしい、ドライフライの釣りができ、マタウラの良さを再認識したし、来て良かったと思った。デイビッドが明日はもっと水の濁りがとれるから、さらにいい釣りになるだろうと言う。暗くなるまで釣って、帰りの車中からは西の空に、ニュージーランドの澄んだ空気の中で、美しい夕焼けが〈お祝いをするような感じで〉見えた。車を停めてもらい、数ショットを撮った。