美しい旋律だった。静かな歌い方で、大勢の男女が歌っていた。ゆっくり、声を張り上げずに歌っているのだが、歌には強い思いが込められているのを感じた。 その歌を聞いたことは前にもあり、思い巡らせたが、いつ、どこで聞いたか、思い出せなかった。で、翻訳の合間の気分転換に調べてみた。オペラで歌われたような気がしたので、ヤフーで「オペラ、合唱」と入力して検索したら、ヴェルディ作曲オペラ「ナブッコ」の合唱がすぐに出てきて、あとは芋づる式に調べると、「Va Pensiero、行け想いをのせて、黄金の翼よ」という歌であることが判明、You Tubeでたくさん聞いた。 いい歌だった。いちばん良かったのがオペラの中で歌われているもので、途中から、体が震えるような感動が起こって不覚にも涙が数滴おちてしまった。さらに驚いたのは、この歌を劇中で歌い終わった後、盛大な拍手が起こって鳴り止まず、そのままアンコールとして続けてもう1回歌い、その時は観客が一緒に歌っていた。劇場全体の大合唱になってしまっていた。いやあ、スゴイ! さらに調べてみると、この歌はイタリアで第2の国歌とも言われるほど親しまれているそうだ。日本で言えば「赤とんぼ」、メキシコで言えば「つばめ」と同じような感じらしい。 また、「ナブッコ」は1842年3月9日にスカラ座で初演され、観客は初演の第1幕だけで惜しみない賞賛を贈り、第3幕の黄金の翼の合唱では当時禁止されていたアンコールを要求するまで熱狂したそうで、このオペラ以来ヴェルディは一躍脚光をあびるようになったそうだ。 とても有名な歌のようで、いまさら紹介するのも僕の不明をさらけだすことになるようだが、知らない方もおられるんじゃないだろうか。 歌はヘブライ人が国を追われ、奴隷にされ、故国に帰れる日を願って歌われる。歌詞を紹介しておこう。 行け、想いよ、金色の翼に乗って 行け、斜面に、丘に憩いつつ そこでは薫っている。暖かく柔かい 故国の甘いそよ風が! ヨルダンの河岸に挨拶を、 そして破壊されたシオンの塔にも… おお、あんなにも美しく、そして失われた我が故郷! おお、あんなにも懐かしく、そして酷い思い出! 運命を予言する預言者の金色の竪琴よ、 何故黙っている、柳の木に掛けられたまま? 胸の中の思い出に再び火を点けてくれ 過ぎ去った時を語ってくれ! あるいはエルサレムの運命と同じ 辛い悲嘆の響きをもった悲劇を語れ あるいは主によって美しい響きが惹き起こされ それが苦痛に耐える勇気を我々に呼び覚ますように! http://www.youtube.com/watch?v=gaXE0v0bJoE http://www.youtube.com/watch?v=4NF6LweEA_A http://www.youtube.com/watch?v=D6JN0l7A_mE