8月15日、曇り、ときどき強風。この日は長湖という、松原湖の隣にある小さな池で釣った。ここでは桟橋から釣ることになる。F野さんからも長湖のヘラブナは大きいですよと聞いていたので期待していた。 行ってみると駐車場のそばの桟橋には3人の先客がいたが、ボクが入るスペースはじゅうぶんにあった。初めはアタリもなく、困ったなと思っていたが、11時頃からウキが動き始め、釣れだした。ここのヘラは傷ついておらず、ヒレも完全であり、とても魚体が綺麗だった。そしてボクに大物が来た。玉網ですくってみると37-8センチメートルはあった。周りの地元のヘラ師も集まってきて、これは大きいと言っていた。 ここでは嬉しいことがあった。4時頃になり、地元釣り師は引き上げ、ボク一人で釣っていたら、桟橋に家族連れがやってきて釣り始めた。爺ちゃんが孫に釣りを教えているんだが、玉ウキを使った雑魚釣りだった。5歳くらいの男の子と7歳くらいの女の子が竿を振っているが、竿が太くて重く、仕掛けを飛ばせないでた。 そのとき、ボクにヘラが掛かった。手元に寄せてきたとき、二人の孫が釣れた釣れたと言いながらボクに寄ってきた。ボクは鉤をヘラから外そうとしたが、ふと思いついて、鉤を外すのをやめ、子どもに魚の引きを感じさせてやろうと思った。男の子の方がボクの近くにいたので、「ボク、竿を持ってみるかい?魚が引っ張るのがわかるよ」「ウン」ボクはヘラを泳がせて竿を彼に渡した。すると、ヘラに引かれた竿を彼は支えられないのだった。「ほら、しっかり持って、ガンバレ」とボクは励ましたが、5歳の子どもでは竿を支えられず、ボクは手を貸した。もし彼が手を放したら竿が池の中に持って行かれてしまう。結局ボクと二人でヘラを寄せて、ヘラは鉤を外して水に戻した。 その子はしばし呆然としていたようで、すぐにお爺ちゃんのほうに走っていった。お爺ちゃんが、何十万もするような竿を持たしてくれて、ありがたいことだ、ちゃんとお礼を言ってきなさいと孫に言うのが聞こえ、その孫はお礼を言いにきたのだった。 ところが、それで終わりではなかった。爺ちゃんと孫たちが引き上げるとき、お爺ちゃんがわざわざ礼に来られた。その5-6分あとだったか、背後から若い女性の声が聞こえ、「ありがとうございました」と言う。「ああ、あなたがお母さんね」「そうです」さらに、その5-6分後、父親がお礼に来たのだった。 これには驚いたなあ。たいした事もしていないのに、何度も何度も一家全体から礼を言われてしまった。家族としても嬉しかったんだろうな。ウム、今日はいいことをしたなと思った。 宿の夕食での酒は旨かったなあ。料理を見ると、今度は信州名物小鮒の甘露煮があった。 部屋に戻り、「海賊と呼ばれた男」を読み進めた。本は上巻、下巻に分かれているが、今読んでいるのは下巻の後半であった。この本の上巻はおもしろく一気に読めたが、後半はややかったるく、読んでいるうちに睡魔が襲ってきて、寝た。