毎年今頃になると、フライパッチに付いているフライを外してフライボックスにもどす作業をする。ようやく体力も戻ってきて、やる気も出てきたので、この面倒な作業をすることにした。
ボクのフライパッチはずいぶん前にチロルの釣具屋で買った物で、閉鎖型になっているのが気に入り、何度も修理をしながら使い続けている。このタイプのフライパッチは日本国内ではあまり見たことがない。二つ折りになっていて、折り曲げて、端に取りつけてあるマジックテープを止めればフライは隠れてしまうので、人に見られないし、フライが抜け落ちる心配もない。
ボクはずぼらで、使った後のフライはフライパッチに付けっぱなしなので、今回1年分のフライを整理することになる。数えてみると、なんと77個もあった!30番のミッジから6番のホッパーまであった。
誰かが”フライフィッシングというのはラインの先に「希望」が付いている釣りだ”と書いていたが、ボクの場合、今年1年間で、少なくとも77回は希望、熱望、渇望をしたことは間違いない。いやいや、そんな数ではない。その10倍か、それ以上の回数、〈食ってくれ〉と祈りを込めてフライを投げただろう。
フライパッチのフライを整理していくと、いくつかのフライでは釣りのシーンが思い起こされ、とっておきの秘密のフライになっていったのだった。いっぽう、フライフィッシングというのはいくらやっても終わりがなく、疑問や迷いが果てしなく生まれてきてしまう。
魚(自然)を相手に釣り人(人)がもがいて来た足跡を、フライパッチが物語っているのである。