4月25日(土)、晴れ。朝から晴れて、この日も暑くなりそうだった。狩野川の水位はまだ高く、下流部の本流筋では釣りにならない。で、以前行ったことのある沢筋に行ってみることにした。昼食は修善寺駅の裏側にある台湾食堂で焼きそばを食べたら、けっこうおいしかった。 その沢は狩野川水系では珍しいと言っていいくらい周りに自然が残っているところで、水質もいいし、渓は開けていて竿も振りやすい。そこに付くと、鮮やかな新緑に包まれて、ああ綺麗だな、来て良かったと思った。大げさに言うと、生きていて良かったと思えるように美しかった。 釣り始めると7-8センチメートルの小さなアマゴがフライに出るが鉤掛かりしない。いくつかのプールを過ぎ、あるポイントで15センチメートルくらいの朱点の綺麗なアマゴが釣れた。ここではこのサイズが釣れたらよしとしなければいけない。 ゆっくりと渓流を遡っていくと幅の広いプールがあった。水の落ち口は3つあって、一番遠くの流れが有望だと思った。1度、2度と流すが出ない。手前の流れでドラッグが掛かってしまう。そこでプールに静かに立ち込み、2度目に流したときにバシャンと出て、水底に戻っていく魚影が見えた。やはりドラッグが掛かって食い損なったようだ。魚はかなり大きかったが、僕はあまり悔しくなかった。気持ちの良い天気であり、美しい新緑の中で、綺麗な渓流に自分が居て、大きな魚が見えただけで満ち足りていた。 イブニングはどこにしようが迷ったが、本流の、今年からカワノ・プールと名付けた所に行くことにした。そこは広々として水面はフラットだが、ライズがよく見られる所だ。行ってみると15センチメートルほど水位が高く、流れも早かった。砂の岸でパイプを吸いながらライズ待ちをしていると、5時を過ぎた頃からモンカゲロウが羽化し始め、それにスピナーフォールが重なっていった。モンカゲロウの羽化は続いたがライズは始まらず、やることもないので、モンカゲロウであることを確認するために捕獲することにした。僕のベストの後ろのポケットに入れて持ち歩いている捕虫網を取り出してセットした。これはむし屋で売っている既成のスプリング入りネットと、カーボンの振り出し竿を組み合わせた自作の捕虫網で、軽く、持ち運びに便利で、伸ばせば2メートル近くになる。このネットで羽化したてのモンカゲロウを2匹取った。カゲロウは大きく、前翅に特有の紋があり、間違いなくモンカゲロウであり、フィルムケースに入れるときに気がついたんだが、翅が濃い緑色をしているのに気がついた!水面や空中を飛んでいるときは明るい茶色なのに、不思議だなあと思った。そういえば、ロナルズの「フライフィッシャーの昆虫学」に描いてあるモンカゲロウのダンの翅も緑色だったことを思い出した。この件については、別の場所でくわしく触れよう。 カワノ・プールでは6時過ぎにライズが始まった。ここは川幅が40メートルほどあって、対岸側でライズするので、川の中程までウェーディングしなければならないが、この日は水位が高く、チェストハイに水が入りそうになった。この日は釣れなかったが、カワノ・プールでは高水位という悪条件でもライズすることがわかったことが収穫だった。ここは川底の傾斜や起伏状態、底石、流れの性状などが組み合わさってライズしやすい環境が整っているのだろうと思った。水面にはモンカゲロウのニンフシャックがたくさん流れていた。 夜は田中山のK木宅で夕食をご馳走になり、おしゃべりして、清水町のエルムにチェックインし、部屋で竹鶴ピュアモルトを飲みながら又吉直樹の「火花」を読み終えた。うむ、鋭く笑いの原点に切り込んだ好著であった。 ・・・つづく モンカゲのシャック