6月30日(火)、曇りときどき雨。釣り二日目。 今日は澤田耕治さんのガイドで釣りをする。昨晩、澤田さんから電話があり、朝は雨のようなので10時ごろに出発して、夕方に勝負をかけましょうということだった。雨の嫌いなボクにとってはありがたい話であり、朝はゆっくり起きて、落ち着いて朝食を取った。 朝食用のレストランは一階にあり、外の駅前を歩く人がよく見えていて、その歩き方がちょっと妙だった。爪先を上げずに、すり足で歩いている人が多い。ことに中年以上の人にその歩き方が多かった。想像だが、北国なので、雪の上や凍った道路で滑らないような歩き方が身についてしまっているのかな、と思った。 ホテルに澤田さんが迎えに来てくれる。彼にガイドを頼むのは2回目であり、つるやのハンドクラフト展でも会っているので、顔はすぐわかった。無精髭が伸び、忙しく働いている雰囲気を身にまとっていた。澤田さんが、「このところ渇水だったので、恵みの雨になればいいんですが」と言う。そして、とっておきの釣り場だという十勝川の源流に連れて行ってくれた。そこはゆるやかに流れ、所々に深みがあり、すばらしい釣り場だった。だが、虫は飛ばず、ライズもなく、釣れたのは20センチメートルくらいのチビのニジマス1匹のみで、まともな魚の反応はまったくなかった。2時間くらい釣りのぼった頃、澤田さんが、「ダメですね。川を変えましょう」と言い、車まで戻って昼食にした。そして「ドライフライでアメマスを釣りに行きましょうか」と言う。「ええっ、そんな所があるのなら行ってみたいな」「峠を越えればすぐの川で、ダム湖のアメマスがインレットの川に遡上するんですよ。いま時分はどこに居るか分かってますから、そこに行きましょう」ということになった。 そこは川が曲がっている所で、内側の反転流の横のガンガン流れている瀬で大型のエルクヘアカディスを逆引きするとアメマスはヘッドアンドテールでフライをくわえるのだった。釣れてくるアメマスは30~40センチメートルくらいだが、流れが強いのでパワーは倍加し、エキサイティングな釣りになった。ある魚は3エックスのティペットを引きちぎって逃げていった。ボクは強い流れに立ち、少しずつ移動しながら釣ったが、魚が固まっている所に当たったときにはワンキャスト・ワンフィッシュの状態となり、ボクは夢中になって釣り続けた。暗くなるまで釣り、全部で10匹以上は釣った。 澤田さんはもっぱら岸にいて撮影係だったが、ボクが岸に上がってきて「スゴイねえ、アメマスのパワーを満喫したよ」と言うと「それは良かったです。アメマスはトルクがありますからね」と答えた。 帰りの車の中で思った。プロのガイドというものは釣り場の引き出しをたくさん持っていて、その時の季節、気温、水量に応じて魚の居場所や水生昆虫のハッチ状況を知っていなければ客に魚を釣らせることはできない。アメリカには名ガイドよ呼ばれる人が何人もいるが、日本ではまだまだ少ないだろう。澤田さんは、そんな名ガイドの一人なんだと思った。「夏の間は休みはあるんですか?」と聞くと、「おかげさまで、予約でビッシリ埋まっているんですよ」とのこと。 ホテルに着き、写真を撮って、握手して別れた。澤田さん、ありがとう、とてもいい釣りだったよ。ニジマスはまたこの次ぎに・・・。