3月5日午前11時、デイブ・ヒューズ/谷 昌子夫妻は伊豆修善寺駅に降り立ち、杉山君が駅に出迎え、川に向かった。杉山君は狩野川の釣りに詳しいので、ガイド役を頼んでいた。僕も修善寺駅で出迎えるはずだったんだが、伊豆縦貫道が大渋滞で遅れてしまった。
デイブは現在70歳で、60年間はフライフィッシングをやっているそうで、これまで35冊の本を書いたという。アメリカでは伝説的な有名人だ。谷 昌子さんも日本の釣り雑誌に文をよく書いていたので、名前を聞いたことがある人も多いだろう。二人はオレゴン州ポートランドに住んでいて、一人娘のコスモちゃん(現在20歳))は日本の大学に行っているので、今回二人で娘に会いに来たのだ。このことを知ったアメリカの釣り仲間のクニ・マスダさん(IFFF理事)がJFFA会長の塩澤さんに彼らの世話を頼むと連絡し、話がJFFAの外務担当理事である僕の方に話が回ってきたというわけだ。そして、僕はこの二人とは長い付き合いがあった。日本国内でのスケジュ-ルは外務委員長の河合宏一君が交渉して立ててくれた。
3月末まで1ヶ月間、日本に滞在する予定だが、彼らはあちこちに行きたいらしく、忙しそうだった。
決まっているのは、6日の夜は杉坂さんのショップでタイイング・デモンストレーション。8-15日は広島でJFFAの古澤理事のお世話でレクチャーをやり、その後四国の中野川倶楽部や九州でも釣るらしい。
5日、彼らは狩野川本流を釣った。平水だし、12.7℃と水温は高めだが、虫が飛ばず、ライズもなかった。デイブはもっぱらニンフで釣っていたが、一度アタリがあったが、すぐにバレたそうで、魚は見ていないという。狩野川上流部で彼らが釣っている所に僕は合流し、やあやあ久し振りと握手をして再会を喜び合った。14年振りだった。暗くなる前に持越川で釣ったが、ガガンボがたくさん居たが、やはりライズはなかった。
この日は湯ヶ島の「テルメ泉園」に泊まり、焼き肉+宴会となった。みんなアルコールが入って上機嫌となり、言いたい放題の宴会になっていったが、二人のゲストも十分楽しんでくれているようだった。食後、部屋に行って二次会となったが、デイブはさっさと寝てしまったが、谷さんは遅くまで座に加わって九州の釣り場の情報を集めていた。
3月6日の日の朝食後、宿の中庭では、持ち込まれたラリー・ケニーとトム・モーガンのグラスロッドの試し振りが行われ、ピクニックテーブルでは日米のフライパターンを見せ合ったりした。デイブは得意の両手同時のフライキャスティングを披露してくれた。また、デイブは宿の前の持越川にいって水生昆虫を採集していた。
この日彼らは昼頃には修善寺駅から名古屋に向かわねばならず、釣りをする時間はなかった。僕の車に彼らを乗せ、湯ヶ島の伊豆屋でワサビの花を買い(食用)、川を見ながら修善寺駅に向かった。時間に余裕があったので、「農の駅」に寄ったりした。修善寺駅では駅舎が新しくなっていてどこに入り口があるのかとまどってしまった。最後にデイブと昌子さんが、
「とっても楽しかったです。ありがとうございます。また会いましょう。アメリカにも来てください」
と言ってくれ、彼らは慌ただしく電車に向かって行った。
もうちょっと余裕を持って旅行すればいいのにと思ったが、昌子さんはやりたいことが多すぎて、どれもこれもすべてやりたい性格らしい。ダンナも大変だなと思ったが、それはそれなりにうまくいっているらしかった。
連中を送り出した後は、本流を見て回ったが、午後の時間が過ぎても虫は飛ばずライズも起きなかった。4時ごろにはK木さんが来て、一緒に釣った。5時ごろになって雨が降り、小降りになった頃、急に数種類のカゲロウが流下してきた。期待がふくらんだが、終にライズは起きなかった。
今年の狩野川は何かおかしい。冷川で14℃、本流で13℃と水温が高すぎる。森村 さんが言っていた。急に水温が上がって虫もビックリしているんじゃないですかね、と。そうかもしれないなあ。彼の言うことなら信じられるような気がした。