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2016年07月14日(木) 
 今日、ちょっとした出来事があった。
 普段通り、午前中は診療をして、昼休みになった。昼休みは12時から3時まで3時間あって、ちょっとした用事(学校の健康診断など)を片付けられる。この日は最近見つけた旨い中華料理店に行って「焼きビーフン」を食べ、車にガソリンを入れてクリニックに戻った。その時点で2時になっていた。昨夜は暑くて寝苦しかったので、やや眠く、ちょっと眠ろうと思ってクリニックの居間のソファで横になったら、瞬間的に眠り込んでしまったようだ。
 そして、意識の暗闇の遠くから「先生、先生」と呼ぶ声がして、その声は何度も繰り返し、次第に明瞭となり、ちょっと切羽詰まった高い声のようになってきた。ハッとして僕は目が覚め、時計を見ると3時半だった。ナースは30分間僕を呼び続けていたのだ。
 僕が居間のドアの所に行くと、ナースが二人立っていて、一人のナースは
「おどかさないで下さいよ。死んだかと思ったじゃないですか!」
と言った。 
 待っていた3~4人の患者さんの診療をなんとか終え、その後、やっと人心地が付いてきた。
「いやあ、まいったなあ、いつもは目覚まし時計をかけて30分だけ寝るようにしているんだが、今日は横になったとたんに眠ってしまったんだなあ。だけど、あのまんま死んだら、楽でいいなあ」
と言ったら、一人のナースが
「そりゃあ、それが一番ですよねえ」
と言う。彼女はよく分かっていて、僕がもっとも信頼しているナースだった。

 僕のクリニックではお年寄が多く、ほとんどの方が楽に死にたいと本気で願っておられる。だが、現実としては、死ぬときには何らかの苦痛を伴うわけで、PPK(ピンピンコロリ)という表現が一時はやったが、実際にコロリとあの世に行けることは珍しいものだ。中でも睡眠中に死ぬのはもっとも苦痛が少なく、そんな運がいい人は希である。
 今回のエピソードでは、死につつある中を、ナースの声でこの世に呼び戻されたような不思議な感覚を感じ、ちょっと残念なことをしたような気がしている。

閲覧数595 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2016/07/14 18:54
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