最近ある人に勧められて、「宮崎駿の雑想ノート」という本を買って読んだ。いやあ、驚いた、それは宮崎駿の遊び心満載の本であった。その本の最後に雑想トークがあってアニメ「紅の豚」の制作に関わる本音を語っている。 「まぁ、映画(アニメ)というのは、実際には”映画”ですから、趣味で描いていくワケにはいかないんで、ヒドイ目に会いました。あーいうこと(アニメ「紅の豚」の制作)をやっちゃいけないっていうのは、終わった後の結論でございます。ワハハハッ!!魔がさしたんです・・・、ああいうのは・・・」 映画となるとある一定の時間観客をあきさせずに話を聞かせ、最後にはストーリーを完結させなきゃいけない。だから、作家が趣味的に自分が好きなことを勝手に長々と描くわけにはいかない。その点、本であれば軍事関係という宮崎の趣味についての夢想がいくらでも描けるし、その筆致は生き生きとして、サイドストーリーやジョークなど、とどまるところを知らない。コマは自由自在、解説文は手書き、個々のお話も歴史的事実からまったくの空想までさまざまで、まさに宮崎駿の世界が満載されていると言っていいだろう。 彼の軍事に関する知識の豊富なことといったら驚くほどで、僕には意味不明の部分がたくさんあり、ついて行けないと思う部分もあった。内容は濃く、この本を読むのに1週間を要した。 それにしても見事な本であった。2800円なら安いもんだ。この本を見終わって、〈ハテ、似たような本を見たことがあるな〉と思った。それは島崎憲司郎の「水生昆虫アルバム」だ。彼も得意のイラストを使って虫の生態を生き生きと我々に見せてくれた。異才が好きなことを思い切り描くと、スゴイことになるのである。 雑想ノート第2部ともいうべき「泥まみれの虎」も読んだ。こっちは第2次大戦終末期、エストニアにおけるドイツ戦車のナマナマしい戦記だ。宮崎は言う。 「戦車にかぎらず軍事一般は人間の暗部から来るものなのだ。人類の恥部、文明の闇、ウンコだ、ゲロだ。中略。戦車は、軍隊の愚劣さや幼児性、歴史の残酷さ、人間の悲劇と喜劇の、そのすべての・・・結晶なのだ!!」 この本は宮崎駿渾身の1冊だと思う。彼は描き上げた後、みずからエストニアに行って、戦場となった場所を見て、その旅行記もこの本に出ている。こちらは定価2500円。 G間さん、この本を教えてくれてありがとう! 2冊ともに、宮崎駿渾身の作品であった。 宮崎駿アニメファンで、この本のことを知らない人がおられたら、ぜったいオススメです! |