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2017年07月03日(月) 
 毎日少しずつやってきた蔵書の引っ越しが終わりにちかずいて、薄いビニールに包まれた一冊の本が残った。ビニールに包まれているということは、古くて表紙やページがばらばらになっていることを意味しているので、貴重な本のはずである。だが、それが何のための本だったか思い出せず、未整理のまま残してあった。
 そこで、今回いい折りなので、スッキリさせようとビニールから本を取り出してみた。それは英語の本で発行年は1787年で、230年前の本だった!(日本では江戸時代、天明7年、徳川家斉が11代将軍となり、松平定信が寛永の改革に着手した年)本のタイトルは例によってクドクドと長いが、要約すればConcise Treatise on the Art of Anglingで、訳せば「簡明釣魚論」ということになろうか。
 なぜ、僕はその本を買ったのだろうか、安くはなかっただろうし・・・。
 本をめくると、各章ごとに魚の図が描いてあるが、それほどのものではなかった。目を引いたのは冒頭の口絵で、紳士と淑女が釣りをしているようすが美しく描かれていた。〈うむ、これかな。だが、その絵を雑誌の記事や本に使ったことはないし・・・〉と思いながら見ていたら、その絵の下にフライが6個フライ名とともに描かれているのに気がついた。〈フーム、これかな。フライパターンの図がちゃんと本に掲載されるのは19世紀以降のことだし、ロナルズの本も1836年の発行だし、珍しいかもしれない〉と思った。ここにいたって好奇心がムクムクとわき上がり、本気で調べることにした。さいわい、「フライフィッシング用語辞典」を書いたときに古いフライフィッシング関係の洋書をたくさん買ったので、いまやライブラリーと呼べるほどのコレクションになっていて、それをチェックすればいい。
 そしてその結果、ほぼまちがいなく、本にフライパターンの図が名入りで載ったのはこの本が初めてだと考えられた。〈そうか、このことが何かの本に書いてあったから、オリジナルの記述を確認するためにこの本を注文したんだな〉と、購入の経緯を納得したのだった。
 というわけで、気分も落ち着いた。そういえば、用語辞典の執筆中は同じような作業を何度もやったな、と思った。
 そこで、拙著「フライフィッシング用語辞典」に以下の文を書き加えておいてもらいたい。

項目:アート・オブ・アングリング
解説:
②Concise Treatise on the "Art of Angling"、1787。著者はイギリス人で、トーマス・ベストThomas Best。
 "簡明釣魚論"と訳しておく。"完璧なフライフィッシャー"と題する第2部では、フライロッド、ウインチ(リール)、さらにはフライパターンやマテリアルについて記載されている。
 この本の口絵にはフライの図が掲載されていて、それらはアントフライ、ダンカット、グリーンドレイク、パーマー、ホーソーン、グレートダンの6つである。筆者が知る限り、本にフライ名とともにフライパターンの図が載ったのはこの本が初めてであり、それまで出版された本には図がなかったので、読者はフライの姿を想像するしかなかった。その意味で、フライフィッシングの歴史上意義深い本となった。

閲覧数822 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2017/07/03 10:56
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