何だと!
同じ川に行ったって?!
で、足跡があったのか。
彼も、もしかしたら、僕と同じ事を考えているんじゃないかなあ。
だから、禁漁間際に行ったんだよ。
おそらく何匹か釣れたろうね。
来年は彼より先に行かなくっちゃあ、ね。
|
9月最後の日曜日、もう釣りはいいかなあと思ってもみたが、やることもないので、釣りに行くことにした。このところ急に肌寒くなってきたし、魚の活性は落ちているだろうが、温泉に入りたいな、と思ったからである。 で、いろいろ候補地を考えた結果、湯河原のN川に行ってみることにした。そこは不思議にもヤマメが居て、シーズン初期にはいい川で、これまでもちょくちょく行っているが、9月に行ったことはなかった。それで様子を見に、ダメモトで行ってみることにしたわけだ。魚は釣れなくても湯河原なら温泉はいくらでもあるし。 行ってみるとそこは自然公園のようになっていて、人は結構居たが、釣り人の姿はなかった。400メートルくらいの区間を釣ったが、チビヤマメらしきのが数回出てフライをくわえられずに戻っていった。一度だけまともなサイズの魚が出た。それは、白泡の真ん中にフライを落として、フライが流れて白泡が切れた後に魚が出る予定だったのが、フライが水面に落ちた瞬間に魚が出て、頭部と口が水面上に見えたのだった。意表を突かれた僕はあわてて合わせをしたが、もう遅かった。結局、まともな魚はそれが最初で最後だった。 考えてみると深いところにはまったく魚は居なくて、フライに出たのは竿の振りにくい木の枝の下だったり、浅いところだった。ということは、餌釣りしに抜かれていることは明らかだった。なるほどね、こんな見捨てられたような渓流にも僕以外に釣り人が来るんだと確信したのだった。 夕方になって僕は湯河原温泉に向かい、奥湯河原へと行った。ここで温泉に入れば、あとは伊豆スカイラインに出て箱根新道を下れば石橋の渋滞は避けられる。 走っていると、白い割烹着を着た、若い時は美人さん風の白髪の痩せ身のオバサンが箒で道の掃除をしていた。 「すみません。このあたりの温泉でお風呂だけ入れるところありませんかね」 と聞く。オバサンはやや考えて 「それなら、すこし下ったところに上野屋という古い旅館がありますよ」 と教えてくれた。僕はにっこり笑って礼を言う。 看板を頼りに狭い道に入り、上野屋で風呂に入った。なかなか風情のある旅館で、内風呂だったが、貸し切りで、いい風呂だった。さわやかに暖まって、温泉水を飲んで、玄関横の喫茶室で一服した。その部屋も古い作りだった。創業300年だそうだが、建物は大正頃に建てられたような感じだった。帰りに車まで来たら、車の向きが変えてあり、Uターンせずにそのまま狭い道から出られるようになっていた。ほほう、風呂だけの客にもこれだけの心配りをするんだな、と感心したものだ。こういうもてなしをうけるとまた来ようという気になる。 釣りの方はボウズを食らったが、気持ちよく納竿できるな、と思った。 |