先日、栃木の釣友から本をもらった。赤星鉄馬著の「ブラックバッス」(イーハトーヴ出版、1986)という本だ。この本は大正から昭和初期にかけて赤星財閥の当主として活躍した赤星鉄馬(1880-1951)の遺稿が見出され、本にしたもの。この原稿は昭和13年頃に書かれたらしく、戦争中にお蔵入りになっていた。赤星鉄馬はバスではマスに響きが似ているので誤解されやすいし、バッスの方が原語の発音に近いと書いている。 ボクは赤星鉄馬の文を読むのは初めてだったが、なかなかの本であった。裕福な新進気鋭の若者がアメリカに留学し、ブラックバスを知る。ブラックバスの釣りは面白いし、食べても旨いし、繁殖は鱒よりずっと簡単であり、これを日本の湖に移入すれば、水産はもとより湖周辺の住民の副業としても利益をもたらし、ひいては国家に貢献するという信念のもとに招致することにした。ブラックバス導入の悪い面にも気をくばり、アメリカでは問題が起きていないこと確認している。そして大正14年、87匹のラージマウス・バスとスモールマウス・バスを芦ノ湖に放流した。当時からブラックバス害魚論があったようで、本の中で赤星はいくつも例をあげて反論している。 赤星鉄馬はこの移入事業をかなりの熱意をこめて実践しており、そのためとてもよくブラックバスのことを勉強していることがわかる。この本はバサーにも、バス害魚論を主張する人達にも読んでもらいたい。また、外来魚排除論者にも読んでもらいたいと思う。 編者は和井内貞行の十和田のヒメマスを引き合いにだしているが、近年の外来魚論争には偏見があるように思われてしかたがない。だいたい、日本固有種というのはほんとうに存在するものだろうか。日本人という人間でさえ、古く起源をたどれば大陸や東南アジアにいきつくのだから。明治以来、日本は門戸を開き、世界と関連をもってきた。いまや日本には帰化植物や帰化動物があふれている。”日本固有種を守れ”と声高に叫ぶ人達にはナショナリズムや純血主義が見え隠れしているような気がする。 ボクはブラックバスを釣ったことはあるが、食べたことはまだない。今度食べる機会があったら食べてみようと思う。 |