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2013年07月16日(火) 
 スキューズ著の「フライに対する鱒の行動」をコツコツ翻訳している。すこし訳しては一太郎というワープロソフトのファイルにして保存している。ワープロソフトは「ワード」を使っている人が多いようだが、僕は「一太郎」が使いやすいので、昔から使っている。
 一太郎には文書情報という、プロパティーのようなものがあって、参照することができる。「フライに対する鱒の行動」の文書情報を見ると;
 作成日:2013年1月12日
 更新回数:338
 総編集時間:105時間
となっている。翻訳し始めて約6ヶ月がたっていて、その間に338回ファイルを書き加え、または、書き直しをしたというわけだ。平均して、1日に2回アクセスしたことになる。ただ、かけた時間は105時間であり、それほどでもない。
 で、いまどこまで進んだかというと、54ページまで来ている。全274ページなので、全体の5-6分の1というところか。この本には図が3ページしかなく、ほとんどが文章なので、ページ数がかせげず、翻訳のスピードは遅い。

 これまで翻訳したものを何人かの人に読んでもらったが、とても面白いと言ってくれ、それが励ましとなって翻訳を続けている感じだ。
 そこで、狂四郎日記の読者にも、これまで訳したものの一部をご覧にいれようと思った次第。釣りに興味があっても読みづらい文章なので、ま、読みたい人だけ読んでもらえばいいかな。
---------------------***---------------
THE WAY OF A TROUT WITH A FLY
フライに対する鱒の行動
そして、

ちょっとした、だが新しい釣りの戦術

G. E. M. スキューズ G. E. M. Skues
(シーフォースおよびソフォース)
「チョークストリームにおけるちょっとした戦術」の著者

1921


私自身、若い日に、博士や聖人が、繰り返し、
 そのことについて偉大な議論をしているのを、
渇望の思いで、いくど聞いたことか
 彼らも私も同じドアから入ってきたのだ 

ウマル・ハイヤームの4行詩


フライに対する鱒の行動

ある賢者が自分の人生で3つすばらしいことがあり-そう、4つめは知らなかったようですが-、なかでも”女に対する男の行動”が絶頂の喜びであったと言ったそうです。若きプリンスたちは5番目の喜びとして”フライに対する鱒の行動”をあげるでしょう。なぜなら、それは、鷹が空中で舞っている状態と、石の上での蛇のすばやい動きと、海の真ん中で船がどう進むのかという謎や、女とかかわった男の予測不可能な行動、などの要素をすべて含んでいるのですから。我らのパイロットたちは、空中の鷹がどのように行動するのかという謎を解明する道なかばのように見受けられますし、海の中の一艘の船がどう動くかという謎はこだわり強い現代人に多くのミステリーを提供してきました。だが、”女に対する男の行動”も”フライに対する鱒の行動”も、ともに我々にとって喜びであり、かつ苦悩であり続けることでしょう。まだ生まれ出でぬ数千世代の先までも・・・。

前書き
 権威ある者たちは貴重な提言をくもらせてしまうものです。権威者というものは情報を既成概念に当てはめて世間にひろめるという不愉快な作業をする人たちであり、しばしば誤りをおかすものなのです。釣りの世界においてはそのような例がたくさんあります。
 おそらく、私が権威ある本について調べた時間よりも多くの時間を費やした釣り人はほとんどいないと思います。私はデイム・ジュリアナ(訳者注:ジュリアナ・バーナーズ)から最新の出版物まで、トラウトフライのタイイングやトラウト・フィッシングに関する本のほとんどすべてを熟読して分析を行ってきたので、こう言いきれるのです。それだけの本を読んで初めて、本を読んでも自分にとっては役に立たないということがわかったのです。その時点に至るまでは、その大量販売品の内容、すなわち私自身が知っている事実、推論、不正確な表現、マテリアルやその使い方、彼らが意図していたことがら、などを正しいと信じて鵜呑みにしていたのです。それ以後では、著者というのは単に実験の提案者でしかないということがわかったのです。実験とは川辺で私自身が観察し、それが正しいかどうか検証することなのです。本の著者というものはもはや信じるにあたいする完全無欠な神ではありません。それは、進歩的な芸術や科学についての本を書いた著者すべてに当てはまることなのです。
 今、ふたたび、新時代のアイデアや発見を鋭い知性のるつぼで煮詰めて分析し、問題を提起してみるのも悪くないでしょう。しかし、近年、これまで信じられてきたことがすべて終焉をむかえていますし、この分析では過去のがらくたを一掃しなければなりません。いっぽう、価値あるものは残さなければいけません。これ以上がらくたを増やさないように-これは後の書き手が努力して、おそらく失敗するでしょうが-しなければいけません。
 法を作り、独断を喧伝してきた権威者は、麻酔のように読者の感覚を麻痺させる一片の阿片なのです。権威者は釣り人の独創的なアイデアや思考を促進するのが真の使命なのであって、相手を麻痺させてはいけません。そうは言っても、彼は権威者になりたかったわけではないでしょうが。
 ものの始まり以来、人は魚と釣りについてあたかも宗教や形而上学のごとくに話してきましたが、費やした作業量やエネルギー量に見合っただけの進歩はなく、右往左往したり、退歩したり、はたまた失敗の泥沼でもがいてきただけのように見えます。この問題は永遠の興味の的なのであり(訳者注:魚のことを人間が理解するのは永遠に不可能なので)、それはこの本でこの後に出てくる推論にたいしての弁解と思ってもらってかまいません。彼らは、疑問が多すぎて答えが出せないような”難問”を取り扱い、人知を集めて解明しようとしたのです。
 私がふり返ろうとしている過去よりもずっと以前から、私はトラウトフライのタイイング作業について書きたいという野心を持っていました。私は過去のすべての本の内容を超えたかったし、この国で生まれたすべてのフライ・タイイングの流派の技術を分析し、明らかにしたいと思ったのです。ですが、経験が私の知識を熟成し、私の意見が健全であるとが自分で確信が持てるようになるまでは、性急に本を書くことはしないでおこうと決めていたのです。私はこの問題に関する本を手当たり次第に読みました。そして読めば読むほど、過去を超えようとするなら、過去から学んだことがらの大部分を捨て去って出発点にもどり、よく考え、技術の実践のもとになる原理を自分自身で発見しなければならないということをはっきりと理解したのです。
 トラウトフライのタイイングについてはたくさんの本が書かれていますが、実利的な技術だけではなく、フライ作成における包括的な理論まで述べた本は1冊もありません。カトクリフCutcliffeの"速い流れにおける鱒釣りTrout-Fly Fishing on Rapid Streams"という本は、これまで書かれたフライフィッシングに関する本の中ではもっとも理にかなった本のひとつですが、彼はこの問題に少し触れています。ただし、彼のフライは主としてルアー(訳者注:アトラクター・パターンという意味)であり、彼は自然の羽虫のイミテーションimitation(模倣)、リプリゼンテーションrepresentation(表現)、サジェスチョンsuggestion(示唆)の問題に関してはごく簡単に述べているだけです。 
 そこで、重要なポイントをイラストにし、さまざまな流派の方法を紹介して、トラウトフライ作成の包括的理論をまとめるという試みをやってみようと思ったわけです。ただ、何世代にもわたる不正確な観察やいいかげんな考察によってもたらされた混乱から解き放つ作業のかなりの部分は”今後の課題”となるでしょう。
 これは野心的なプロジェクトですが、私は怖じ気づかずにやろうと決めたのです。ただいくつかのプロジェクトはあきらめました。それは、私がまったく知識がない分野、あるいは、私が調べた範囲でのことですが、現在の科学的な知識では解明できないことを取り扱うことです。
 鱒の視力についてですが、この本の初めのページをとばして読んだ人は、物の形を見分けたり、色を識別する視力が、鱒と人とはかなり異なる思われる十分な根拠があるという記述を見つけるでしょう。もしそのような差異が存在するとしても、私はそれがかならず存在すると断言しているわけではありません。私はこの分野に関してはまったく知りませんし、解明する方法も知りません。3次元の世界にいる者として、4次元の世界の秘密を知りうる手段を持っていません。もし、私が鱒と人の視力の差異を理解したならば、その理解によって、私は平明な、わかりやすい言葉で、さまざまな段階のフライタイヤーに説明できるのですが。この問題は過去にいかなる言語でも述べられたことがなく、もし解明されたら、フライ作成においてまちがいなく革命が起きることでしょう。私たちは過去の実践者がこれまで苦労して作り上げた経験主義によって悪化したマンネリリズムから脱却してワンランク上の段階に進めるでしょう。しかしながら、私が到達した年齢の時にはいまだその時には至っておらず、科学の発達は私が提示した疑問を解明できるとは思えません。いっぽう、私と言えば、まだいくばくかのエネルギーが残っているだけなのです。
 このような状況にあって、信じやすい大衆から当時最高の教本として認められ、フライフィッシングに関する多くの本に引用されている、いくつかのトラウトフライ作成の入門書に、これから何か付け加えようとは私は思っておりません。
 しかし、1冊の本という形の中に、トラウトフライの作成の真の理論付けを理解するために考慮すべきいくつかの事柄についての私の考察を閉じ込めてみるのも、皆様の役に立つのではないかと思います。そうすることによって、遠からぬ日に、若く、科学の心を持つ釣り人やフライタイヤーがこの本から触発されて問題を取り上げ、現在解明されていない疑問を解明してくれ、科学の難しい専門用語を使わずに、平明でやさしい言葉で一般の人がわかる形で世にひろめてほしいのです。そのため、この本では、トラウトフライ作成の真の理論化のもとになる原理と考察をさぐるために、健全な基本事項を提供したいと思っております。
後略。
    ジー・イー・エム・スキューズG. E. M. Skues

しおりひもがある場所が現在の地点

閲覧数1,089 カテゴリ日記 コメント3 投稿日時2013/07/16 16:26
公開範囲外部公開
コメント(3)
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  • 2013/07/18 04:27
    さん
    お名前:焚火男

    Half a league, half a league,
    Half a league onward,

    また、楽しみがふえました。
    期待しております。
    次項有
  • 2013/07/18 10:21
    鉛筆狂四郎さん
    焚火男さん

    お、来たなあ、英語で。
    調べてみたらテニスンだね。
    テニスンは学生のころ、暗記させられたな、イーノック・アーデンを。
    今でもその冒頭は思い出すことが出来る。
    Long lines of cliff
    breaking have left a chasm...

    言葉というのは厄介者だなあ

    次項有
  • 2015/02/12 13:18
    さん
    お名前:島崎憲司郎

    神と仰ぐG.E.M.Skuesの歴史的名著日本語版只今拝領!
    川野先生の御名訳に定めし天上のスキューズ神も喜んでおられることでしょう。
    早速じっくり読ませて戴きます。釧路の沖野画伯の水彩画のしおりも実にいい味出してますね。ブックデザインも秀逸。質実共にズシリと来る立派な御本から立ち昇る濃密なオーラに三半規管がクラクラしました。

    お身体が大変な状況にも関わらず、こういう物凄いアウトプットをやり遂げてしまう
    ドクターカワノ氏の超人的な実行力に改めて敬意を表しつつ、
    先ずは取り急ぎ厚く御礼申し上げます。


    次項有
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