ひょんなことから厚木に住む藤やん(藤野氏)と呼ばれるヘラ師との付き合いが生まれ、25日夜、町田の居酒屋でともに飲んだ。
藤やんは45歳、10歳からヘラブナ釣りを始め、腕を上げ、20歳でマスターズクラブ入会、全国6位、ついで3位となり、2000年、2002年には年間1位となった。餌メーカーや鉤メーカーのモニターとなり、雑誌に連載を載せるようになった。ところが思うところあって2003年には同会を退会し、メディア/モニターから身を引き、自分の好きな釣りだけをやるようになった。そして、相模湖の巨べら師となり、現在に至っているという。現在は相模湖専門であり、相模湖の住人と名乗っている。とまあ、彼はヘラブナ釣りのプロと言っていい男であった。
ボクはヘラブナ釣りでたくさんの疑問を抱えているが、その疑問にちゃんと答えてくれる人を探していた。そんな時に藤やんと知り合い、ぜひ時間を作って話を聞かせてくれと頼み、今回の飲み会になったわけだ。
藤やんはとても気さくだし、正直に本音を話してくれ、分からないことは分からないと言ってくれるのがよかった。おかげで大部分の疑問が解決した。
このときに印象に残った話がある。ハタキの釣りで浅場で掛けた巨ベラの疾走をいかに止めるかについて、彼は竿を、右や左に、横に倒して止めるそうだ。これは彼があるとき、阿波の磯釣り師が根に突っ込もうとする魚を制御するのに竿を真横にして止めていたのをテレビで見て、同様のやり方をヘラブナ釣りでやるようになったのだそうだ。これは魚を混乱させるためと彼は考えていたようだ。
この話になったとき、ボクはスキューズ本の「横への圧力」で書いてある内容を思い出し、藤やんに話した。
「フライに対する鱒の行動」の中の”横への圧力”から抜粋。
”お分かりでしょうが、鱒は頭を左右に横に動かしながら横への動きによって泳ぎます。鱒が下流に走ったとき、あなたは彼の頭を強く横に引きますよね、すると鱒は半分の時間を釣り人の引く力に対抗するために使い、その圧力がきわめて強い場合は抵抗することが不可能になり、残り半分の時間も使い切ってしまうのです。その結果、彼は進行方向を変えざるを得ないのです。もし、あなたが同じ量の引く力を自分の頭上の方向に向けて掛けたとしたら、それは彼を持ち上げるだけであり、彼を停止させたり、向きを変える効果は全くないのです”
この説明によって、横への圧力が魚の疾走を止める理由が論理的に明快に述べられていて、藤やんは深くうなづいていた。熟練の釣り師ともなれば、理屈はどうあれ、どう対処すべきかは”感覚”で身につけているわけで、その説明は一瞬にして理解出来たのだろう。
こんな具合で時間は過ぎ、あっと言う間に4時間がたっていた。酒も肴も旨かったし、話は面白く、勉強になり、多少はボクからの知識を提供することもできた。
いい飲み会だった。
今後とも、よろしくネ。