8月8日、この日はクニさんと我々3人でルビーハビタット内のルビー川で釣る。私有地内での釣りであり、釣っていいのは予約をした人だけで、1日4人まで。人気が高く、なかなか予約がとれないそうだが、今回はクニさんが一緒に行く予定の友人が行けなくなったので、われわれ二人が同行することになったもの。釣り料金の設定はないが、120ドルほどの寄付をするのが慣例になってるらしい。 ここでルビーハビタットのことを少し説明しておこう。ここは1100エーカー(135万坪)の広大な土地で、その中を14キロメートルにわたってルビー川が流れている。ここを買ったのはテキサスに住む新聞社社長のクレイグ・ウッドソンという人で、1992年の事だった。彼は世界中を釣り歩いた釣り人であり、晩年に住む理想の土地をさがし、このルビー渓谷を買うことにしたそうだ。”牧場”として売っていたのだが、彼は自然保護地として維持していくことを決意し、関係各方面に働きかけ、認可されたという。 ルビー川の水源は大部分が湧き水であり、水生生物の生存には理想的であり、水量も年間をとおして安定している。理想的な鱒釣りの川と言っていいだろう。鳥やシカ、ムースが生息している。川に深いところは少なく、とても釣りやすく、生息している鱒はほぼブラウントラウトであり、少数のレインボウトラウトがいる。 この日は水生昆虫のハッチが少なく、したがってライズも少なく、釣りには苦労した。塩澤さんはウェットフライ風に釣って小型のブラウントラウトを数匹を釣り、僕は夕方フラットな水面でライズしていたものを狙い、なんとかドライフライ(サイドワインダー、20番)でまともな魚を1匹を釣った。それは綺麗なブラウントラウトだった。クニさんはポイントを熟知しているようで、数匹の良型を釣ったそうだ。 僕は釣り場全体を見てやろうと車で見て回り、途中で出会った高齢の女性と話をした。彼女はマーサ・ウッドソンさんであり、オーナーであった。クレイグは5年前に亡くなったと言う。彼女は案内もしてくれ、クレイグの好きだったポイントを教えてくれた。 夜、明日からの帰国移動のための荷造りをして、ワインを飲む。テキサスの住人がモンタナに理想の土地を求めたなんて、「ブロークントレイル」、「ロンサム・ダブ」などの映画と一緒だなと思った。僕も九州育ちなので北海道にあこがれる気持ちはよくわかる。人の考える事は同じなのである。 8月9日、朝、我々3人はツイン・ブリッジズのスイートグラス(バンブーロッド・メーカー)にグレン・ブラケットに会いに行った。入り口に「漁夫生涯竹一竿」と書いてあり、聞くとグレンは日本通であり、仏教徒だそうだ。グレンに会いたかったが、残念ながら、彼はその日は工房に来ないそうだ。中を見せてもらい、写真を撮って、クニさんともお別れとなった。 クニさんに礼を言い、お互いの健康を祈り、再会を約して分かれた。 あとは、ボーズマン空港 → ワシントン1泊 → 成田 (→名古屋)と経由して帰国。 あしかけ11日間の旅行は終わった。僕はずっと一人で車を運転し、走行距離は約2000キロメートルとなり、いろいろあったのだが、塩澤さんとの弥次喜多道中もなんとか無事に終えることができた。僕としても記憶に残る旅になったし、塩澤さんにも喜んでもらえば嬉しい。そして、我々二人の働きがJFFAの発展の基盤や参考になれば、行ったかいがあるというものだ。やや疲れたが、ようやく元の状態に戻りつつあるので、安心してもらいたい。 タイトラインズ! |