お名前:釣りたいクン3号
くださ・・・、芦ノ湖の時に持ってきてください。
目の前に一本の竿がある。フライロッドで、グラスファイバー製、7フィート、4番の竿だ。制作者はラス・ピークで、彼の作るグラスファイバーの竿は大量生産品ではなく、一本一本、手作りの工芸品であり、バンブーロッドを作るのと同じかそれ以上の手間をかけているという。その性能はストラディバリウスのバイオリンに匹敵すると評されたこともある。その彼がやはり竿作りをしているトム・モーガンから注文を受けて作った竿が、目の前にあるのだ。トム・モーガンがウィンストン・ロッド・カンパニーを買い取ってオーナーになった数年後にラス・ピークに会いに行き、竿を注文したものだそうだ。 そしてその竿を僕がe-Bayというオークションで競り落とすことができた。競り落としてすぐにトム・モーガンからメールが来た。トム・モーガンとは数回のメールのやりとりをしたことがあり、知り合いであった。 「あなたが競り落としてくれてとても嬉しい。この竿は本当の宝物で、私の竿作りのお手本にしていたものです。遠慮なく釣りに使って楽しんでください・・・」 と書いてあった。そして、後に送られてきた竿にはトム・モーガンの手紙が添えられてあった。 ラス・ピークは2001年にこの世を去り、トム・モーガンも不治の病にかかっている。名工が名工のために作った渾身の作品として、この竿はいずれ伝説的な竿になるだろう。 相模川の河原で竿を振ってみた。 何も言うことはない! そのスムーズなことと言ったら、スバラシイの一言である。 僕の持っている竿のなかで、一番大切な宝物になった。 ひとつだけ疑問が残る。 それほどの竿をなぜトム・モーガンは手放すことにしたのか? 本人に聞くしかないが・・・ これは想像だが、自分は病を得て釣りに行けない。銘竿といえども釣り道具であり、釣りに使って竿を生かしてくれる人に譲ろうと思ったんじゃないだろうか、と。 写真をとったのでお見せしよう。 |