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2013年12月08日(日) 
  無音の闇 私のままで  朝日新聞 2012年12月25日付 朝刊
 荒(あら)美幸紀さん(24)は、フルートが得意で東方神起が好きな、東京の大学生だった。体中の神経に腫瘍ができる難病を発症、一昨年秋に聴力を、昨年春には視力を失った。一切の光と音を奪われた孤独。彼女に出あって考えた。人の強さとは、きずなとは、なんだろう。

 24日、荒さんは、同じ盲ろう者が集まるクリスマスパーティーの会場にいた。退院して半年、荒さんはすでに人生を前へと歩き始めていた。
 目が見えず耳も聞こえない盲ろう者に情報を伝える手段の一つ、指点字を、驚くほどの速さで習得した。点字変換ができる情報端末も、すぐ使いこなした。
 今春、明治学院大仏文科の4年に復学。大学近くに越してきた家族と暮らし始め、抗がん剤治療を受けながら講義に通う。卒論は来年、挑戦する。
 盲ろうあ者の多くは社会に出るすべを知らず、家に引きこもっている。そうした人たちを、勇気づける存在になりたい。そんな目標も口にした。
 でも彼女がつづるブログに時々出てくる、こんな記述が気になった。
 《そもそも生きるって、自分って、なんだろう?誰かのお供がなければ外を歩けなくなった私って。首にリードを巻いた犬の気分になる。私ってポンコツじゃないか、と》
 秋、取材を申し込んだ時も、荒さんはためらった。
 重い障害があるのに頑張っている、盲ろう者なのにすごい、と言われる。その「なのに」がムズムズ居心地が悪い、と言う。
 《障害を持ったことで、底上げされてる気分。私は誰かを感動させるために、生きているんじゃない。》
 大学は指点字通訳者やパソコンでのノート筆記者を用意し、授業を保障した。通学・帰宅時の付き添いは大学のサークル「点訳会」が引き受ける。点字を学ぶ10人ほどが最初は気遣いしつつ、やがて友達として、彼女とつながった。
 何人かでおしゃべりをする。一人が荒さんの手のひらや背中に指で字を書き、状況を伝える。置いてきぼりにしないよう、会話に間をつくる。「場のルールがいつの間にかできた」と嶋村大樹さん(21)は言う。
 荒さんにとって、顔も声も知らぬ新しい人間関係。手に書かれる文字に、性格や気持ちは表れる。かかわりを重ねるうち、その人の輪郭が次第に浮かんでくるのだという。
《なぜ私の周りには、こんなにも温かくて優しい人があふれているんだろう。目と耳が使えていた頃より幸せなのかも……。》
 11月初め、大学の学園祭があった。
 車いすでやって来た荒さんのもと、入れ代わり友人が寄ってきて、手に言葉を伝えてゆく。
ソーセージのにおい、車いすにぶつかる人。にぎわいに囲まれ、その一部を感じとり、彼女は、楽しんでいる、とばかり思っていた。
ところが、本当は不安と緊張とで泣きたいほどだったと、後で知った。
 健常であることが当たり前の大多数の人。何もできない障害者にどう接すればよいかわからず、戸惑う空気を感じる、という。
 この場に自分はいていいんだろうか―――。
《それでも、私は社会に出て行くことで、自分の人生を切り開こうと決めたのだから。》
 荒さんは、記事が載る前にやっておきたいことがある、と言い出した。
 出身地の栃木県で過ごした中学・高校時代、仲良しの4人組がいた。よくけんかし、旅行した。その仲間に、自分の今の状態をまだ知らせていなかった。
 闘病のことは伝わっている。だが「会いたい」とメールが来ても「お互い忙しいよね」とはぐらかしてきた。見えて、聞こえるふりを、してきた。
《こんな私を変わらず受け入れてくれるだろうか。あの頃を思い出すと、胸が
しめつけられる。今の自分を否定してしまいそうで。
 でも見えて、聞えていた22年間の荒美有紀も、私の大切な一部だから。》
 何日も考え抜いた文面のメールを、送信した。  (石橋英昭)

○○〈読者投稿〉
 私は常々、人と幸せを分かち合うことは、人の苦しみを知って初めてできるものだと考えている。
 荒さんの記事には、”きれい事“は書かれていない。胸がおしつぶされそうなほどの彼女の本音と、現状がしっかり書かれている。だからこそ、記事から文字ではなく、彼女の思いが胸をまっすぐ貫き、「なのに」などという薄っぺらい同情ではなく、共感ができた。
 私自身は、先天性の右耳難聴である。幼いころから周囲の「なのに」の中に甘えておさまってしまっているのではと気付かされた。そして、彼女のようにきちんと向き合って生きていないことにも気付かされ、往復ビンタされたような痛さと恥ずかしさが全身を走った。
 ただ、往復ビンタ後はすがすがしかった。見ず知らずの人だが、懸命に自分の人生を歩んでいる人がいるという事実が私を幸福感でいっぱいにしてくれている。   南園沙織さん 27歳 広島県
 ×      ×
新聞で「心がぽかぽかするニュース」という本が発売されたと知り昨日、買ってもらいました。自分のリハビリになると思って一件づつ時々写して見ます。
写し間違い多々あり誤字脱字は私のミスです。

閲覧数1,069 カテゴリ日記 コメント6 投稿日時2013/12/08 12:01
公開範囲外部公開
コメント(6)
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  • 2013/12/08 16:13
    ターコさん
    荒さんは
    皆さんに勇気と感動を
    与えて下さっています!

    人間の幸、不幸は障害の有無ではないですね~!

    心の持ち方
    一つなのですね~。

    私もパワーを
    頂きました(^o^)/

    頑張りたいと思います。
    次項有
  • 2013/12/08 16:50
    ターコさん
     ありがとうございます。
    本の題名につられて買いました¥1050円です。
    指先の運動のための投稿ですが読んで貰えて嬉しいです。
    気の向いた時ときどき写したいと思います最後まで続くか分かりませんので買って先に読んでください。
    次項有
  • 2013/12/09 06:36
    コッチさん
       私は呼吸機能障害により、荒さんやまーちゃさんに較べれば障害が軽い要支援2です。

       何でも出来ますが何をやっても動くと息が弾んでしんどい思いをします。時々、この苦しみは死ぬまで解決できないな…と絶望感におそわれることもあります。

       このまーちゃ日記を読んで、頑張らねば…という気になりました。

       有り難う御座いました。
    次項有
  • 2013/12/09 11:14
    私も読んでみたくなりました。

    なんで自分ばかりと思っても仕方ないのに・・・

    でも強いですね。
    やっぱり前をむかなくちゃあと反省です。
    次項有
  • 2013/12/09 11:17
    コッチさん
     ありがとうございます。

    私は重度障害者ですが、まだ女房が何でもやってくれるので介護認定は受けていません。外出もあまりしたくないのです。

    コッチさんからのこのコメントには恐縮しました。
     話題もないので自分のリハビリのつもりの丸写しの文ですが、今の私にはこれも楽しみです…これからもボチボチ出来ることを頑張ります。
    次項有
  • 2013/12/09 11:43
    みつちゃんさん
     ありがとうございます。
    「心がぽかぽかするニュース」という本です。
    寒い時期ぽかぽかするかどうか分かりませんがリハビリにはなります、ときどき不定期に書き写して見ます。
    次項有
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