6月21日、朝3時半に起きて相模湖にヘラブナ釣りに行った。最奥部の天神下というポイントに行ったが、大きなニゴイが釣れただけで、その後は当たりがまったくなかった。昼頃には船頭さんを呼んでポイントを移動し、良く行く大曲に入った。ところがここでも当たりがない。退屈になったボクは携帯ラジオを聞きながら釣った。
夕方になり、ボクは腹をくくり、あきらめと絶望が一体となって、今日はボウズだなと思っていた。5時頃だったろうか、背部から
「こんにちは」
と声がする。振り返ると、釣り船に乗ったある男がニコニコしながら、
「F野です!」
と言うではないか。すぐに分かった。彼はこの狂四郎日記にときどき書き込みをしてくれるあのF野さんだった。かなり前にともに曳き船されたことがあるらしいが、残念ながらボクの記憶になかった。だが、SNSによく書き込みしてくれているので、初対面の感じはなくて、ボクは釣り座をはなれ、舟の舳先のほうに移動してあいさつをした。F野さんはほぼプロのヘラ師だそうで、ボクもいろいろ教わりたいので丁重にごあいさつをして名刺をわたす。F野さんはこれからナイターで明日の朝まで釣るという。
おたがい頑張りましょうと言って、ボクは釣り座に戻った。置き竿を持ち上げようとしたら浮きが見当たらない!で、竿を上げたら魚が掛かっていた!なんともはや、情けなくも、置き竿に魚が掛かっていたのだった。それは39センチメートルのヘラブナであり、ボクはかろうじて運良くボウズをまぬがれたのだった。
なぜ釣れたか考えてみた。そこはゆっくりした流れのあるポイントであり、流れで浮きと仕掛けは流され、置き竿にしてあったので浮きはある時点で流れるのが止められ、鉤は引かれて底から持ち上がり、フライファースト・プレゼンテーションのようになって、ヘラブナが食いついたのではないだろうか。食い気がなかったヘラブナでも、こういう状況であれば、餌を食うということなのだろう。そう言えば、鯉釣りでも”この原理”を使った釣り方を聞いたことがあった。その後何度か意識的にその釣り方をやってみたが、2匹目は釣れず、時間切れとなった。
こんなことってあるんだねえ。転んでもタダでは起きないことになっているんだから。
この日は疲れたが、最後にボウズをまぬがれ、幸せな気分を味わったものだ。
夕方にはまわりにヘラ鮒のもじりが出始めていた。昼間はあれだけ食わなかったので、ナイターは期待が持てるだろう。うむ、さすがはプロだなと思った。F野さんに、
「がんばって!」
と声を掛けてボクは納竿し、帰路についた。