ただただ眺めていた「セイタカアワダチソウ」にそんな歴史と一生があったなんて知る由もなく、なんだかチョット切ない気分になりました。
素敵なお話をありがとうございました。
【セイタカアワダチソウ】 道端の草見事に染色 やまざきようこ 草刈りを終えてふと見上げたら、あぜ道のセイタカアワダチソウが黄金色に輝いていた。日本ミツバチやアブがぶんぶん飛んでいる。放置された田畑に繁茂している毒々しいセイタカアワダチソウも、開きたての鮮やかな黄色い花は目をみはるほど美しい。 強靭な根を張り、一筋縄では抜けない逞しさはどうにもならない。草取りの目の敵にしていたら、ある日、京都から年配の染色家の先生が訪ねてこられ「見事ですね。これで染め物をしたら美しい色がでますよ」と言われた。この毒々しい花が染色に…? 大きな琺瑯(ほうろう)鍋二つ送られ、先生が白い絹の布地を持ってきて、娘と私にセイタカアワダチソウを刈り取ってくるように言われた。道際に生えていた草を両手いっぱい刈り取ってくると、琺瑯鍋に水を張ってガスにかけ、ざっと洗ったアワダチソウを、沸騰した鍋に放りこんだ。汁は次第に茶色がかったドブネズミ色に。こんなので染色ができるのだろうか? 先生はアワダチソウを取り出して媒染剤を入れて絹の布地を煮込んだ。やがて白い絹は薄緑をおびて、竿に干したらみるみる美しい萌木色に変った。平安時代、貴族の着物に描かれているような、春のおだやかな若草色でやわらかな光沢のある色だった。それからひと月ほど経ったある日、娘に小包が届いた。中から美しい萌木色の絹のブラウスが。 セイタカアワダチソウの原産地は北米。種が何かにくっついてきた帰化植物かと思っていたら、調べてみると、明治のころ、園芸種として日本に持ち込まれ、戦後は蜂蜜採取を目的に輸入され、昭和40年代に繁茂するようになったという。アレロパシー(他感作用)を持っていて、ススキなどと競合し、周囲の植物の成長を抑え、やがては自身の成長も抑え自滅する。花粉でアレルギーを起こすといわれるが、花粉は重く風が運ぶには不適切。虫が運ぶ虫媒花で、アレルギーは濡れ衣だという。 開きかけを一本、花瓶に挿した。凛とした美しい花だ。 (おけら牧場・ラーバンの森運営) × × 自家中毒があり何時かは枯れる草とは知っていましたが蜂蜜を採るために輸入されたとは知らなかったです。この連載は毎回楽しみに見ています。 |