秘密の川なんて、これまで何度もバレて、ダメになってきた。
この川はある友人から教わり、くれぐれも内密に頼むと言われていた。仲間内にも教えないでほしいとのことだった。その川に今年初めて行ってきた。去年も1度行ったきりだ。
この日は梅雨の晴れ間で風もなく暑かったなあ。汗がしたたり落ちて眼鏡に付き、何度も木陰で休みながら遡行した。小さな渓流だが、底は砂ではなく岩なので、とても遡行しにくい。そして川のまわりには木が覆い被さり、川岸には茅や蔦が生い茂っていた。岩には苔が生えていて、蜘蛛の巣だらけで、これはほとんど釣り人が入らないことを意味していた。カワトンボがたくさん飛んでいた。
7-8センチメートルのチビアマゴは至る所から出てきたが、なかなかまともなサイズのアマゴガ釣れなかった。そして渓流のそばに竹林が現れ、枯れた竹が何本も川に倒れ込んでいた。そこを苦労して通り抜けたときには、入渓して3時間くらいたっていた。ボクはかなり疲れていた。
だが、竹林を抜けると遡行はずいぶんと楽になり、竿も振りやすく、ポイントも狙いやすかった。大岩の横を流れる浅い瀬にフライを流した時、大きめのアマゴが出た。取り込んで片手の指を広げて計測してみると20センチメートルあった。この川では合格点をもらえるサイズであり、嬉しくなって、いちおう、証拠写真をとった。
その後100メートルほど遡行して納竿、結局5時間くらいは川に居たことになる。
秘密の川は生きていたわけで、安堵感があった。
だが、いつまで持ちこたえるやら・・・
ここは年に一度アマゴが生き残っていることを確かめにいく川になっている。