やっと黒澤 明監督の映画「デルス・ウザーラ」を見ることができた。”やっと”というのは、ずっと前から見たかったんだが、数少ない見るチャンスをさまざまな事情で失ってきていた。ビデオ屋にも行って探したが、黒澤の他の映画のビデオはあってもデルス・ウザーラはなかった。ビデオ屋のパソコンで調べてもらったら、デルス・ウザーラのビデオやDVDは作られていないという。それから数年が経ち、NHKBS2で黒澤明シリーズを放送することを知り、3月3日の夜8時からの放送を録画して、やっと見ることができたというわけだ。 いい映画だった。僕はとても気に入った。シベリアの原野に一人で生きる原住民漁師デルスと探検隊長との友情の話になっているが、主人公はあくまでもデルスである。過酷なシベリアで生き伸びるために祖先から引き継がれてきた「自然とつきあう知恵」というか「作法」というか、そんな摂理を信じて生きてきたデルスは都会から来た探検隊のガイドとなって何度も彼らの窮地を救う。年老いて原野で生きられなくなったデルスはハバロフスクにある隊長の家に住ませてもらうが、街では生きられず、ついには死んでしまう。デルスの生き方はイヌイット、カナダ・インディアン、アイヌ、ラップ、マタギ、etcとの共通点も多い。このデルスは実在の人物であり、原作はロシア文学の古典になっている。 映画では過酷で美しいシベリアを黒澤明は見事な映像で見せているし、人の必死な生き様を浮き彫りにすることに成功した、と思う。ことにデルスと隊長の二人が湿地帯平原で迷い、夜の寒さに備えて草を刈ってシェルターを作る場面は圧感であり、クロサワの面目躍如である。この場面は見た人の記憶に長く残る、映画史に残る名場面だと僕は思っている。 この映画は僕のお気に入りとなった。皆さんにも是非お勧めなのだが、見ようと思っても見られないのが残念なところだ。僕がとった録画ビデオ(S-VHS)で良ければいつでも貸し出しをするが・・・。 P.S.アマゾンで調べてみたら2002年、2006年にDVDが出ていた。いやあ知らなかったなあ。 |