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2011年10月27日(木) 
 西湖のへら鮒の強い引きが忘れられず、西湖に行った。3度目である。
 週末(22,23日)の天気は不安定だったが、日曜の朝9時からは晴れるらしいので、土曜日は民宿丸美に泊まることにした。行ってみると風は梢をしならせ、ヒューゥと音をたてていた。強風のせいでこの日の釣りをあきらめた人がいたそうだ。明日、舟が出せるかどうかは明日の朝に決めよう、ということになった。夕食では日本酒を燗で飲み、部屋ではアンナ・カレーニナを読んだ。
 日曜の朝、念願の前浜へ舟を出した。前浜は西湖の東端であり、風は西風なので、風下にあたり、波が高く、とても釣りにならなかった。それでも数時間ねばったが、釣れなかった。
 電話して船頭を呼び、湖の反対側の「ユース下」というポイントに移動。ここは風もなく、水面はおだやかで、別天地のようだった。そこからは富士山が綺麗に見えた。
 はじめに入った遠浅で釣れず、自力で溶岩帯に移動したが、やはり釣れない。近くの釣り人にはときおりヘラが釣れている。意を決して
「あのー、竿は何尺をお使いですか?」
と聞くと21尺とのこと、ありがとうございますと礼を言って、17尺から21尺に換える。それでも釣れず。使っていたグルテンに集魚材であるスイミーを混ぜたが、それでも釣れず。夕方、ヘラが水面でモジリだした。活性が上がっているようだが、釣れなかった。西湖のヘラのアタリは一目盛りか二目盛り、はっきりとウキがまっすぐに下がるのだが、そのアタリが一度もないのだ。ごく小さなアタリはあるのだが、西湖のヘラのアタリではないと思いつつ、合わせをくれても空振りばかり。
 嗚呼、気まぐれな自然の女神よ!
 しらふの時はちゃんとその法則を守ってくれるが、ワインに酔ったか、それともハンサムな若者でも見かけたのだろうか。そんな時は自分の仕事はほったらかしになってしまうのだから。
 ついに4時半の時間切れ。エンジン船に引かれて船着き場へ帰る。富士山の姿がだんだん小山の陰になり、てっぺんだけが見えるようになった。
 船着き場で、
「今日は1回もアタリがなかったんだよ。1回もだよ。場所が悪かったのかなあ」
船頭さんは
「そんな日もあるっすよ」
と言ってなぐさめてくれる。
 いやあ、本当に、観光に来たようなもんだった。観光に来た人は、綺麗な自然、爽やかな空気、透明感のある湖の水、紅葉の始まりがけの樹木、富士山を体験して、それで喜んでいるのだから、釣り人から見たら信じられない人々なのであった。同じ場所に行って、かたや喜び、かたや落胆しているんだもんね。

閲覧数1,166 カテゴリ日記 コメント1 投稿日時2011/10/27 09:41
公開範囲外部公開
コメント(1)
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  • 2011/10/27 10:30
    さん
    お名前:焚き火男

    人間是非一夢中
    次項有
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