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ほら、見な、あんな雲になりてえんだよ。 第9作『男はつらいよ 柴又慕情』から 寅さんの故郷、葛飾柴又は、週末になるとたくさんの人でにぎわいます。京成柴又駅を降りて、駅前にある寅さんの像を見て、帝釈天参道に立ち並ぶ、団子屋さんなどに立ち寄りながら歩くと「男はつらいよ」の世界に入り込んでしまったような気がします。 駅前から寅さん記念館にかけて、さまざまな散策コースがありますが、ところどころに寅さんの名ぜりふを刻んだ道案内看板があります。「寅さんふるさと名言集」と題するこの案内板は2009年、山田洋次監督と出川三男美術監督の監修で葛飾区が設置したものです。11カ所の案内板の「寅さんのことば」の選定では、ぼくもお手伝いをさせて頂きました。 寅さん記念館の江戸川側にある柴又公園の案内板の名言が本編のことばです。 寅さんはどうして旅に出るのか?売り言葉に買い言葉の大げんかだったり、心を寄せた女性に失恋したり、寅さんはいつも柴又からどこかへ旅立ちます。 第9作『柴又慕情』では、吉永小百合さんふんするマドンナの歌子に恋をした寅さん。幼くして母親と別れた歌子は、小説家の父親・修吉(宮口精二)との確執に悩み、結婚に踏み切れずにいるときに、寅さんに出会います。寅さんと家族の優しさに触れた歌子は、背中を押されたような気持ちで、新しい人生を踏み出します。 ラスト近く、江戸川土手で妹・さくらはこう聞きます。「どうして旅に出ちゃうの?」。ゴロンと横になった寅さんは空をみつめて「ほら、見な、あんな雲になりてえんだよ」とつぶやきます。 切ない思いを胸に抱いて、ぽっかりと空に浮かんだ白い雲に憧れる。こうして寅さんは旅に出るのです。永遠の旅人、車寅次郎に、ぼくらが憧れるのは、こうしたつらい男の胸の内と、気ままであろうとする、自由さにあると思います。 ことばを刻んだ柴又公園の案内板は、この場面の撮影場所である土手の近くに設置されています。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |