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そこが渡世人のつれぇところよ。 「男はつらいよ」各作から 「男にはつらいことがあるけれど、顔で笑って、肚(はら)で泣くものだ」とは星野哲郎さん作詞、山本直純さん作曲の主題歌「男はつらいよ」で歌われている寅さんの心情です。 テレビ版のプロデューサーで演出家の小林俊一さんが、仮題の「愚兄賢妹」から「男はつらいよ」にしたのは、その星野哲郎さんが作詞した「意地のすじがね」という北島三郎さんの歌の歌詞がきっかけだったそうです。 渥美清さんは北島三郎さんの歌のフアンで、そのなかに「つらいもんだぜ 男とは」という歌詞があります。 また、渥美清さんの人気ドラマ「泣いてたまるか」の最終回のタイトルは「男はつらい」(1968年3月放送)でした。その脚本を書いたのが、山田洋次監督だったのです。この二つの要素が「男はつらいよ」というタイトルに結実したのです。 寅さんの「渡世人のつれぇところよ」は、大抵、去り際、別れ際のことばです。ニッコリ笑っていても、肚ではぐっと堪えている寅さんの「つらさ」を一番理解しているのは、妹のさくらかもしれません。 第6作『純情篇』のラスト、旅立つ寅さんを、さくらは柴又駅まで見送ります。少年時代、寅さんの初めての家出のときも、さくらがこうして見送りました。 ホームのベンチで「せめてお正月までいたっていいじゃない」とさくら。寅さんは、世間の人がこたつで団らんしているときも「冷てぇ風に吹かれて鼻水たらして、声をからして、モノを売らなきゃならねぇ稼業なんだよ。そこが渡世人のつれぇところよ」と答えます。 まさしく「男はつらいよ」です。別れ際さくらは「あのね、お兄ちゃん。つらいことがあったら、いつでも帰っておいでね」と精いっぱいの気持ちを伝えます。「そんな考えだから、俺はいつまで一人前に……故郷ってやつはよ……」という寅さんの声は、電車のドアが閉まって聞き取れません。 寅さんが、なぜ故郷に帰ってくるのか?その答えが、この名場面に凝縮されていると思います。寅さんにとっての故郷は、自分の「つらさ」を理解してくれるさくらの優しさなのです。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |